(1)事前調査

断層通過予想位置の精度を高めるとともに,トレンチ掘削地点の土質・地質状況を把握するため,トレンチ掘削に先立って比抵抗2次元探査(電気探査)およびボーリング調査を実施した。

@ 比抵抗2次元探査(電気探査)

トレンチ掘削の候補地とした2枚の水田において,断層通過位置に関する補強証拠を得るための比較的簡便な手法として,比抵抗2次元探査を実施した。

探査の諸元を 表4−2−1に示す。また,測定機器の仕様や測定・解析方法の概要については,別冊「資料編」に添付した。

探査の結果から得られた地下の比抵抗分布を図4−2−4に示す。

この図をみると測点20〜24m区間を境に起点側と終点側の比抵抗分布が不連続(E.L.−0〜2m付近に局所的な高比抵抗部が認められる)となっている。

この比抵抗分布の特徴から,測点20〜24m区間を中心とする範囲に,比抵抗分布の異状を示す原因となった地質構造が存在するものと推定した。一方,地形情報等から事前に推定した断層通過位置ともほぼ一致するため,これを挟んだ両側に各1地点のボーリング調査を実施した。

A ボーリング調査

比抵抗2次元探査の結果から推定される断層通過位置を挟んだ両側の各1地点(Br−A1・A2)において,表層の土層分布状況と基盤深度の把握を目的としたボーリング調査を実施した。

またトレンチ掘削後に,AT層の分布深度と基盤深度を再確認するために,トレンチの南西側においてボーリング調査を追加で行なった(Br−A3)。

以下(表4−2−2)に調査数量表を示す。

各孔の詳細な記載は1/20柱状図として別冊「資料編」に添付した。

ボーリング調査の結果,調査地における地質分布状況の概略は以下の通りである。

・ 地表付近には,耕作土または旧耕作土と考えられる,厚さ0.7m程度の粘性土層が分布する。

・ これより下位には,基盤岩深度まで主に砂礫及び粘土混じり砂礫が主体で,所々に比較的まとまった厚さの粘性土層の挟在がみられる砂礫優勢層が分布する

・ A1孔のG.L.−4.65m付近には,比較的純度の高いAT火山灰再堆積層が認められ,A2孔ではこれに対応するような明瞭な火山灰層は確認できなかったが,若干の火山ガラスを混入する粘性土優勢区間がG.L.−5.40〜6.63m区間に認められた。なお,A3孔ではG.L.−5.55〜5.64m区間に高純度のAT火山灰再堆積層が確認されている。

・ 基盤岩は,珪質な粘版板岩主体で全体に破砕を受け粘土状〜岩片状となっている。その出現深度は,A1孔で約10m,A2,A3孔で8.1〜8.5mで認められ,南側で浅く北側で深い。

ボーリング掘削に引き続いて,地層の年代情報を得るために,ボーリングコア試料を用いた微化石総合調査および14C年代測定を行なった。

その結果を図4−2−5地質断面図にまとめた。

Bまとめ

・ ボーリング調査で得られた地質情報と先の比抵抗分布の特徴とを比較すると,概ね高抵抗部は砂礫層または同優勢層に,低比抵抗部は粘土層または砂礫層中の粘土分が優勢となる区間に対応するが,明瞭ではない。

・ 基盤岩の上面を表わすような,特徴的な比抵抗分布状況は認められなかった。

・ これらの結果から,比抵抗分布の特徴は土層分布状況の詳細については表現してない可能性が考えられたが,旧地形から比較的明瞭に推定できた断層通過位置と深度5m付近以浅にみられる比抵抗分布の不連続箇所が一致していたことを重視して,測点20〜24m区間を中心としてトレンチ掘削を行なうこととした。