5 今後の課題

本活断層調査によって、甲陽断層・西宮撓曲の連続性やその性状、あるいは昆陽池断層帯の活動性など、六甲断層帯の六甲山南東部における性質が明らかになってきた。しかし、本調査によって新しい情報が数多く得られたが、さらに解明すべき問題点が浮き出されてきた。これらの問題点の主なものを以下にまとめて示す。

@芦屋川右岸沿いに推定される南北構造の解明

深江測線における反射法地震探査結果と、地質調査所が実施した芦屋川測線における探査結果を比較検討すると、芦屋川右岸部に沿って、南北性の傾斜構造が存在すると推定される。しかし、その詳細な構造や性質に関しては未解明な点が多く、今後、東西方向の測線を設定した反射法地震探査等の実施が望まれる。

A昆陽池断層帯の西方への連続性

昆陽池断層帯は、兵庫県が別途に実施した武庫川における反射法地震探査によって武庫川まで追跡されている。しかし、その西方への延長に関しては、西宮撓曲や甲陽断層の延長部と交差することになり、これら相互の関係がまだ解明されていない。したがって、阪神競馬場周辺において、本調査における小林測線や甲東園測線と直交する方向での反射法探査の実施が望まれる。

B伊丹断層の解明

伊丹断層は、昆陽池断層帯の南側に位置する東西性の断層である。しかし、その詳細な性状は直接的に把握されているわけではない。また、伊丹市街地を東西に横断する構造であり、社会的な重要性は大きいので、その活断層の性状を詳しく解明することが必須であろう。この断層は、低断層崖に起因する地形が残っているので、反射法探査およびボーリング調査を併せたトレンチ調査の実施が必要と考えられる。

C昆陽池断層帯の詳細検討

昆陽池断層帯の特性に関しては、本調査において有用な情報が得られた。しかし、断層活動の間隔や明確な最新の活動などについての詳細な情報は、まだ不充分である。そのため、今後、断層帯の南縁構造や西野地区などを対象としたトレンチ調査による詳細な情報の取得が望ましい。