(1)測 定

図3−3−14図3−3−15に測定状況模式図を示す。測定方法は以下のとおりである。

1)準備作業

◎測 量

計画測線沿いに所定の間隔で測定点をマーキングし、中心線・水準測量により全測定点のレベルおよび座標を求めた。マーキングはペイントや舗装用測量杭を用いた。

◎受震器の設置

地震計は1受震点に9個グル−プ/ch(夙川測線)あるいは6個グループ/ch(小林、甲東園、深江測線)のものを使用し、各受震点を中心として測線方向に約200cm(夙川測線)あるいは約160cm間隔(小林、甲東園、深江測線)で展開し、1グル−プの展開長が20m(夙川測線)あるいは10m(小林、甲東園、深江測線)となるように設置した。地震計の固定はスパイクを地面に突き刺す方法、あるいは測線上で地面に直接設置できない箇所では、ピックスタンドにスパイクを突き刺す方法を用いた。

夙川測線で用いた地震計は、3個ずつ直列に結線されており、これらが3つずつ並列に結線されており、9個で1つのアナログ信号にして観測装置への入力としている。小林、甲東園、深江測線で使用した6個の地震計は直列に結線されており、6個で1つのアナログ信号にして観測装置への入力とした。このように1測定点に多数個の地震計を設置して観測することを、グル−ミングと呼んでいるが、この目的は、

A)反射波観測においてノイズとなる表面波を減衰させる。

B)受震器の感度を増す。

C)測定点間隔が粗いために起こる波数領域でのエイリアスを防ぐ。

などである。

つぎに、夙川測線に限っては使用した探鉱機はテレメトリー型であり、観測本部から送られるコマンドに従って、地震計の信号(アナログデータ)をデジタルデータに変換するアンプボックス(RSU)を4受震点毎(80m)に、また、観測本部と各アンプボックス間のコマンド、データの伝送のためにケーブル(DTC)を測線上に設置した。

2)測定作業

<夙川測線>

発震点間隔は10mとし、震源車を所定の発震点位置に設置して所望の回数 発震を行う。観測された地震波形は、アンプボックスで増幅した後バンドパスフィルターをかけ、A/D変換して所望のスタック数だけ加算してボックス内に記憶し、1震源点における発震が終了した後、記録を順次観測本部に伝送する。観測本部ではまず相互相関演算(コリレーション)を行い通常の記録になおした後、モニターで記録の良否を確認し、磁気テープに収録した。上記したように、1発震点における観測(発震〜データ収録)終了後、震源車を次の発震位置に移動させ、順次観測を行った。なお、1発震点に対する受震区間は、測線終端付近を除き発震点から前方2km以上を原則とし、観測が終了した発震点後方の受震機材は、順次測線の前方に移動・設置した。

<小林・甲東園・深江測線>

発震点間隔は5mとし、震源車を所定の発震点位置に設置して所定回数の発震を行う。観測された波形は、A/D 変換して所望のスタック数だけ加算し、モニタ−で記録の良否を確認し、探鉱機に収録した。1発震点における観測(発震〜データ収録)終了後、震源車を次の発震点位置に移動させ、順次観測を行った。

なお、1発震点に対する受震区間は、測線の終端付近までは発震点から前方60ch(600m)を原則とし、また終端部では60chの固定展開で行った。観測が終了した発震点後方の受震機材は、順次測線の前方に移動・設置した。

3)使用機器

◎震 源

【バイブレーター(Y2400)】

バイブレーターの動作原理および外観を図3−3−16、図3−3−17に示す。起震を行う場合には、車体中央のプレートを地面に下ろし、これに車重の大部分(約13トン)をかけて地面に圧着する。この際、車体とプレートの間にはエア・ダンパーを挟んでいるため、鉛直な上載圧は加わるが震動は遮断される。つぎに、プレート上のアクチュエータでカウンターマス(3トン)を上下に振動させると、その反力がプレートを介して地面に伝わり地盤を震動させる。

<バイブロサイスの原理)

バイブレーターを震源として用いた探査は通常バイブロサイスと呼ばれており、その原理をまとめると図3−3−18に示すようである。

A.バイブレーターで低い周波数から高い周波数まで徐々に周波数が遷移(スィープ)する波形で起震する(@)。発生波の振幅は速度振幅が一定となるように再帰的に制御する。

B.反射波は図のB〜Dに示すように、ダイナマイトなどのパルス震源とは異なり、震源波形の初動時刻・振幅・位相をずらした波形となる。従って観測波形はAに示すように、これらを重ね合わせた複雑な波形となる。

C.観測終了後、震源波形(@)と観測波形(A)の相互相関関数を計算する。この結果はEに示すように、ダイナマイトなどのパルス震源と等価な記録となる。

<バイブロサイスの特徴>

A.起震エネルギーが大きく、深度3000m以上の探査が可能である。

B.低い出力のエネルギーを継続して出力する震源機構のため、環境への影響が少ない。

C.起震周波数範囲を選択できるため、所望の周波数帯域の観測が可能である。

D.可搬性に優れており、作業効率が高い。ただし、やや車両サイズが大きい(L=8.16m,W=2.45m)ため、進入できる道路が限られる。

【油圧インパクター(JMI−200)】

地面に圧着したベースプレートを、ガス圧で加速したピストンで打撃する、一種の重錐落下震源を車載したもので樺n球科学総合研究所が開発した。起震力は最大で100kgの重錐を高さ6mから落下させた場合に相当する。

発生する波はパルスであるが、比較的高い周波数までの広帯域の波を発生できる。このため、浅層部の解析が可能である。また、舗装道路上でも使用可能であり、自走できるので移動が容易である。

図3−3−19に油圧インパクターの外形図を示す。

◎探鉱機

【G・DAPS3】

地震計からのアナログデータをA/D変換し、デジタルMTに出力する装置である。この装置の特徴として、IFP機能(フローティングポイントでA/D変換する)を持つこと、テレメトリー探鉱機であり、リモートユニット内で前置増幅、フィルタリング等の処理を行い、A/D変換後のデジタルデータをケーブルを通じてレコーディングユニットへ送ることができ、内部でコリレーションをとれることなどが挙げられる。おもな諸元を以下に示す。

・チャンネル数 最大8192ch/16ライン

                      516ch/ライン

・サンプリング間隔 8192ch 0.5−4msec

                   4096ch 0.25−4msec

2048ch 0.125−4msec

・ノイズエディット付き分散スタッカー(オプション)

・テープ出力書式   SEG−Y フォーマット 6250bpi レコーディング

・ファイバオプティック/ツイストペア併用

・RSUパラメータのリモートコントロール

・タッチディスプレーによる容易なオペレーション

・リモートシステムテスト機能   ジオフォン、ラインテスト

パワー、RSU内温度測定

                   RSUアナログ適正テスト

・ライン展開、テスト結果のカラーグラフィックス表示

・データ解析およびQC用データ処理

【BISON 9060A】

IFP機能をもつ探鉱機で最大60chの収録が可能。記録の加算はメモリー上で行い、記録はハードディスク上に書き込まれる。機器の諸元は以下のとおりである。

・チャンネル数  :最大60チャンネル

・収録データ長  :最大24000データ(60ch収録時)

・サンプリング間隔:0.05〜4.0msecまで10段階

・データ書式   :SEG2 FORMAT

・周波数特性   :4〜4000Hz

・ビット数    :16bit

・分解能     :80db

・フィルター   :ハイカット 60〜4000Hzまで9段階

           :ローカット 4〜1024Hzまで4Hzステップ

・ゲインコントロール:0〜60dbまで20dbステップ

◎地震計

【SM−7B(SENSOR)】

・固有周波数   :10Hz

・グルーピング  :3シリーズ−3パラレル(9個/グループ)

・抵抗値     : 739オーム

・感度      :0.627V/cm/sec

【SM−11(SENSOR)】

・固有周波数   :30Hz

・グルーピング  :6シリーズ(6個/グループ)

・抵抗値     :1742オーム

・感度      :0.3 V/cm/sec