4−6 起震断層としての麓郷断層の評価

以上の結果をまとめると次のようになる.

麓郷断層は東大樹木園地点において,西側の礫層に東側の溶岩が衝上する東上がりの逆断層であることが明らかとなった.

麓郷断層の活動性に関するパラメータは以下のとおりである.

ただし,以下のパラメータは本調査における東鳥沼地点と東大樹木園地点で断層活動が連動し,かつ変位量も同じと仮定し,算出している.

断層の型

東側上がりの逆断層(地質・トレンチデータ)

地表付近では低断層崖〜断層崖として現れる.横ずれ変位はみられない.

断層の走向はNS〜NNEで,傾斜は約50°.南部では,地表出現断層であり,断層伝搬褶曲の形態を示す.一方,北部は,高角逆断層からL字状に折れ曲がりフラット化するブラインドスラストと考えられる.

長さ 29km(地形)

走向 北−南ないし北西−南東(地形・トレンチデータ)

平均変位速度 垂直方向で,

0.24−0.27 m/1000年程度(十勝火砕流堆積物(1.18±0.06Ma);反射法地 震探査)

0.2 m/1,000年程度(支笏第1テフラ(41ka):東鳥沼地区ボーリングデータ).

活動度はB級.

1回の変位 垂直方向で最大3m(東大樹木園,トレンチ,ピット,ボーリングデータ量 ).

最新活動期 約3,750yB.P.以降,約2,400 yB.P.以前(トレンチ)

約4,550yB.P.以降,約2,700 yB.P.以前(ピット)

約3,750yB.P.以降,約2,700 yB.P.以前(最小範囲)

平均活動間隔  約13,000年〜20,000年(15,000年)(東鳥沼地点および東大樹木園地点)

1回の地震活動の規模  待される最大の地震規模は,気象庁マグニチュードでM7.3〜7.4程度

*活動間隔の算出:Spfa−1の変位量8mを最新活動による変位量3mの3回分と仮定して,平均活動間隔を算出すると,およそ4万年間に2回分または3回分のイベント間隔があり,平均的な活動間隔は1万3千年より長く,2万年より短いといえる.また,平均変位速度と単位変位量から逆算すると15,000年前と算出される.精度に問題があるが,長さからは11,500年とすべて一万年間以上の活動間隔をもつことが明らかとなった.