1−6 調査結果の概要

富良野断層帯は,活断層研究会(1991)による中御料断層(「夕張岳」図幅の断層番号N),御料断層(「旭川」図幅の断層番号J,「夕張岳」図幅の断層番号E),中富良野ナマコ山断層(「夕張岳」図幅の断層番号G)及び麓郷断層(「旭川」図幅の断層番号I,「夕張岳」図幅の断層番号D)からなる.

本年度は,第3年次の調査として,活断層の活動性の評価をおこなうことを目的として,盆地東縁の断層系にあたる麓郷断層を対象に地形地質調査(精査),ピット,ボーリングおよびトレンチ調査を実施した.なお,麓郷断層は,リニアメントの連続性などから北部の麓郷断層a,南部の麓郷断層bに分けられているが(活断層研究会,1991),本報告では,麓郷断層として一括して取り扱う.

平成14年度の調査結果より,麓郷断層は,富良野市東鳥沼地区で実施した反射法地震探査より,十勝火砕流堆積物(熔結凝灰岩)相当の反射面の形状から,波長の長い撓曲構造を示すことが明らかになった.このことから富良野市鳥沼付近より北方では,麓郷断層は少なくとも地表出現断層ではなく,ブラインドスラストである可能性が高いことが予想された.一方,富良野市布部から南陽にかけての麓郷断層は,富良野市山部から南陽にかけて明瞭に地形面を変位させ,低断層崖が認められることから,地表出現断層となっていると考えられた.

今年度は,麓郷断層の活動性を把握するため,詳細調査箇所を選定するために地表踏査(精査)を実施した.精査の実施に先立ち,断層地形の可能性のある微地形を抽出することを目的として,空中写真を再判読した.この判読図を元に踏査をおこない,その結果を縮尺1/5,000地質図にまとめた.この調査の結果,ピット・ボーリング・トレンチ調査を実施する候補地として上富良野町東中地区,富良野市東鳥沼地区,富良野市山部 東大演習林樹木園地区の3箇所を選定した.

深さ2m程度の極浅層の地質状況を把握し,活断層の位置を限定する目的でピット調査を実施した.調査箇所は,当初設計は,上富良野町東中地区と東大演習林樹木園地区の2地区で,各2箇所行う予定であった.しかし,調査用地や地質状況を総合的に判断した結果,東大演習林樹木園地区において4箇所を実施した.このうち2ピットから,断層による上盤変形の構造の一部が確認された,断層の構造を明らかにするため,2ピットを1つにつなげて成形した.

深さ数15m〜30mオーダーの中深層の地質構造を把握し,断層面の傾斜や形態を明らかにする目的でボーリング調査を実施した.調査箇所は,当初設計は,上富良野町東中地区,富良野市東鳥沼地区の2地区であったが,その後東大演習林樹木園地区も加えた3地区において実施した(図2−1).数量は,上記3地区において計15孔(延べ長:375m)を実施した.

活断層の位置において,断層近傍の層序および構造を把握し,断層の活動時期を特定する目的でトレンチ調査を実施した.調査箇所は,上富良野町東中地区および東大演習林樹木園地区の2箇所で実施した.

以上の調査の結果を総合すると,以下のようになる.

麓郷断層は,盆地内堆積物に衝上する東傾斜で東上がりの逆断層である.麓郷断層の最新活動は,東大樹木園地点において,約4550年前以降,約2400年前以前であることが確実であり,約3750年前以降,約2700年前となる可能性が高い.最新活動に先行する活動は今回の調査からは明らかにすることができなかった.麓郷断層の単位変位量は,東大樹木園地点におけるトレンチ調査,ピット調査およびボーリング調査から,鉛直変位量で約3mと推定される.麓郷断層の平均変位速度は,東鳥沼地区のボーリング調査から,Spfa−1の鉛直変位量が約8mであることから約0.2m/1000年と算出された.麓郷断層の平均活動間隔は,東鳥沼地区の平均変位速度と東大樹木園で得られた単位変位量3mをつかうと1万5千年程度となる.また,Spfa−1の変位量8mを最新活動による変位量3mの3回分と仮定すると,過去4万年間に2回分または3回分のイベント間隔が想定されることから,平均的な活動間隔は1万3千年より長く,2万年より短いと予想される.

図1−1 北海道の主な活断層と富良野断層帯の位置