4−1−2 北川北地区

表4−1−2に北川北地区の総合層序・解釈表を,図4−1−2に北川北地区の地質断面解釈図を示す.

[地層の堆積時期など]

安山岩溶岩・砂礫層(An・Mfd層)は斜長石斑晶が目立ち石英斑晶を微量含む比較的珪長質な安山岩が主体であり,自破砕溶岩相が認められることから火山近傍の比較的で形成されたと考えられる.調査地域周辺では数回の火山活動が確認されているが(NEDO,1999),分布状況からAn・Mfd層は鮮新世〜前期更新世火山岩類に相当すると考えられる.北武佐地区で見出された類似の火砕岩・火山性堆積岩の年代が前期更新世を示すことから,取りあえず前期更新世に位置づけることにした.

TGs層は葉理の発達した火山灰質砂〜粘土を主体とし静水域の堆積物とみなされるが,ほぼ水平な構造を示すことから堆積以後に顕著な構造運動を受けていないと推定される. TG2層は層相から土石流堆積物であると判断でき,南東に層厚が増加する傾向を示し,くさり礫を特徴的に含む.TG1層はくさり礫を含まず,UPsg2層を削剥し堆積し,Ma−lにおおわれることから最終氷期までに堆積したと判断される.

Ma−l層以上の地層(火山灰・ローム層)は後期更新世末〜完新世に堆積したと判断され,ほぼ地形なりに等層厚で堆積している.

[地形・地質発達および断層活動]

近傍の知床基部山地で新第三紀鮮新世後半〜前期更新世にかけて安山岩質の火山活動があり,An・Mfd層が形成・堆積した.An層は自破砕溶岩相であり,溶岩は一部水域に流下した可能性も推測される.侵食期(不整合面の形成)を挟み,第四紀中期更新世にTGs層が静水域で堆積した.

中期更新世の間氷期(ミンデル−リス?)以後の寒冷化に伴う山地からの砕屑物の増加によって,それまでの侵食面は扇状地性の堆積物によって広範囲に埋積された(TG2層の堆積).TG2層の堆積面(高位面)は5°程度の勾配を持っている.これに対してTG1層の堆積面(中位面1)は2°未満の勾配であり,堆積面勾配に明瞭な相違が認められる.このため,調査地区の山地側では高位面が中位面に対して明瞭な比高をもって段丘化しているのに対し,調査地区の平野側では高位面が中位面1にやや側方浸食を受けながら埋積されるような形態(収斂交差型不連続型)となっている.リニアメントとして認定されている高位面末端の急斜部と中位面1との境界を示す遷緩線はTG1層堆積時の側刻に起因する高位面の侵食面と中位面1の堆積面の境界として位置づけられる.

中位面1や低位面1は現河床面に対して余り比高差がない.このことは、両面が堆積以後,ウラップ川の下刻が余り進んでいないことを意味し,山地側の隆起が中位面1形成以後は余り顕著ではないことを反映していると考えられる.

後期更新世末以降,摩周火山などの活動に伴う降灰があり,地形の平滑化が進んでいる.