(3)養老牛地区

ピット調査は地形測量(U.3)で明らかになった幅60m程度・比高4m程度の地形の撓み?(地形変換)部の中で,極表層の詳細な地質層序の把握と活構造に伴う地層の変形等の確認を目的として1箇所(S04−Yo−P1)実施した.ピットはボーリング調査で群列状に配置された7孔(前年度のS03−3孔含む)のうち,北西より3番目(S04−Yo−6孔)と4番目(S04−Yo−2孔)の間に配置されている(図3−2−13).図3−3−26に養老牛地区のピットの諸元を,表3−3−5にピット調査層序表を,図3−3−27にS04−Yo−P1のピットスケッチ展開図とピット壁面の接写写真(写真展開図)を示す.

養老牛地区の1箇所のピットの層序は,上部火山灰・ローム層(UVL)に限定され,上位より,Ts層(耕作土),UVLvs1層(火山灰質シルト質砂),UVLch1層(軽石混り砂質シルト),Km−1f層(Km−1f降下軽石),UVLvs2層(火山灰質シルト質砂),UVLch2層(軽石混り砂質シルト)およびMa−g〜i層(Ma−g〜i降下軽石)に区分できる.調査の結果,活構造に伴う地層の変形は認められなかった.

以下,上位から各層の概要を記す.

上部火山灰・ローム層(UVL)

Ts層(耕作土):草根が混在する耕作土からなり,淘汰の良い褐灰色のシルト質細粒砂がレンズ状〜ブロック状に混在する.

UVLvs1層(火山灰質シルト質砂):上〜中部は灰褐〜褐灰色の火山灰質シルト質砂からなり,礫混り砂層がはさまれる.火山灰質シルト質砂は塊状で径2〜10mmの軽石が散在する.礫混り砂層は中粒砂からなり塊状で,灰〜黄褐色の凝灰岩の亜角礫が散在し,下位層との境界は明瞭で,降下火山灰の可能性がある.下部は径20mm程度の橙褐色の軽石を含む腐植土からなり,旧表土とみなされる.

UVLch1層(軽石混り砂質シルト):塊状不淘汰な軽石混り砂質シルトからなる.下位層を削り込む窪地状の分布形状を示し,ガリーを埋積した堆積物と考えられる.

Km−1f層(Km−1f降下軽石):橙褐〜黄褐色を呈す軽石(径2〜30mmの角〜亜角)からなり,全体に火山岩片(径2〜5mm)が散在する.逆級化構造が認められる.

UVLvs2層(火山灰質シルト質砂):上部は斜交葉理のある黄褐灰〜褐灰色の火山灰質シルト質細粒砂からなる.下位層との境界は明瞭である.下部は腐植土(所々軽石円礫が散在)からなり,火山灰質シルト質砂層がはさまれる.火山灰質シルト質砂層は塊状で淘汰が良く降下火山灰の可能性があるが,境界付近が草・木根に擾乱され不明である.

UVLch2層(軽石混り砂質シルト):不淘汰な軽石混り砂質シルトからなり,上下層との境界は不明瞭である.一部基底に葉理の発達した砂を伴い,下位層を削剥していることが確認でき,ガリーを埋積した堆積物と考えられる.

Ma−g〜i層(Ma−g〜i降下軽石):軽石の形態と火山礫の含有率から,Ma−g(径5〜20mmの軽石主体),Ma−h(径5〜30mmの軽石主体で灰色火山片を多く含む)およびMa−i(平均径10〜20mmで最大径100mmの軽石)に区分でき,径8cmほどの閃緑岩礫を含む.

図3−3−26 養老牛地区ピット調査の諸元

表3−3−5 養老牛地区ピット調査層序表

図3−3−27 S04−Yo−P1ピットスケッチ・写真展開図