4−4 発生しうる地震の規模

活断層の長さ(L)、単位変位量(D)と発生する地震の規模(マグニチュード:M)には次のような関係がある(松田、1975)。

LogL = 0.6M−2.9 (1)

LogD = 0.6M−4.0 (2)

(1)式から求められるマグニチュードをMl、(2)から求められるマグニチュードをMdとする。起震断層としてまず想定されるのは光地園断層である。光地園断層は長さ8kmなのでMl=6.3と計算される。一方、単位変位量を紋別地区で1.15m、上野塚地区で1.65とするとMdは6.8〜7.0となる(表4−2)。光地園断層の北には更南断層が分布するが、この断層は忠類面(6万年前)に変位を与えていないことから、ここでは考慮しない。

一方、押帯断層から朝日断層に至る十勝平野断層帯主部については、後期更新世以降の活動を示す形跡が皆無のため、地震規模についての検討は難しい。仮に押帯断層から朝日断層までが全て同時に活動したとする。この区間でもっとも変位量が大きいのは途別川断層付近であり、高位面の累積垂直変位量は60mに達する。この区間の断層帯総延長は80kmであり、Ml=8.0となる。仮にMl=Mdとなるとして、この場合、

LogD=LogL−4.0+2.9=LogD−1.1

となることから、D=6.3となる。活動回数は60m/6.3m=9.5回、高位面の年代を30万年前とすると30万年間に9.5回の活動となるので活動間隔はすなわち30/6.3=3.2万年となる。3.2万年に一度、6.3m動く断層ならば、忠類面および上帯広T面相当に変位が認められてしかるべきだが、例えば十勝川北岸の上帯広T面に断層リニアメントを横断してそのような大きな高度差は認められない。前縁の東居辺〜朝日断層のみ活動としても3.2万年間に6.3mの大きな変位となり、非現実的である(表4−2)。

続いて、十勝平野断層帯主部のうち、平均変位速度が比較的大きい途別川断層および同じく前縁を構成する士幌川断層について同様の計算をすると、1.8万年間に一度、3.6mという大きな変位が得られる。この場合、尾田面および上帯広U面では3.6m、忠類面および上帯広T面では10.8mの変位が生じなければいけないが、やはりそのような大きな地形変位・高度差は認められない。最新活動期や活動間隔に関する直接の地質学的情報は、旭断層において過去1万4千年間活動が無い、ということのみであり検証は困難だが、このことは十勝平野断層帯が後期更新世以降活動が衰えたことを間接的に示唆するものかもしれない。