(1)火山灰分析

半湿状態の試料を50°C,15時間で乾燥後,乾燥重量を測定,ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液1〜2%の状態で超音波洗浄し懸濁液が清澄になるまで繰り返し洗浄する.使い捨てメッシュを用いて篩い分けの後,120〜150メッシュ試料について薄片作成,全鉱物分析(200個計数),重鉱物分析(200個を目安,重鉱物に乏しい場合は200個未満の場合もある),火山ガラス形態分析(吉川,1976に準ずる),ガラス・重鉱物の屈折率測定を行った.測定には温度変化型屈折率測定装置(RIMS)を用い,火山ガラス,重鉱物それぞれ30個を目安に測定を行った.分析結果を表3−4−3−2に示す.

トレンチTR3−1から採取された2試料からは、いずれも多量の角閃石を含む火山灰が得られた。火山ガラスは水和の完了していないものを含み、その屈折率は1.499〜1.503前後に集中する。この値は、火山灰アトラスの濁川テフラのデータ(1.503−1.508)に近く、京都フィッショントラックにより報告されている同テフラのデータ(1.499−1.502)と完全に一致する。一方、北海道の後期更新世テフラで多量の角閃石を含むテフラとしては、銭亀−女名沢テフラがある。広尾〜大樹町にかけて、このテフラは忠類面相当の段丘面を覆う降下火山灰として普遍的に見いだされる。ガラスの屈折率は1.505−1.513(火山灰アトラス)および1.499−1.503(京都フィッショントラックのデータ)であり、TR3−1とオーバーラップする。すなわち火山ガラスのデータのみではこの2つのテフラが双方とも候補となる。

一方、斜方輝石の屈折率は、TR3−1のデータは1.707−1.712であり、濁川は1.706−1.713(新編火山灰アトラス)、銭亀−女名沢は1.712−1.725(新編火山灰アトラス)となり、濁川テフラとよく一致する。また角閃石ではTR3−1は1.670−1.680、濁川は1.670−1.675(新編火山灰アトラス)、銭亀−女名沢は1.662−1.665、1.670−1.675(新編火山灰アトラス)となる。これらから、TR3−1で認められたテフラは、濁川テフラと判断される。なお、濁川テフラの年代は12ka(火山灰アトラス)であり、トレンチにおける層位(ローム層最上部)と矛盾しない。