3−4−2 結果

紋別地区のトレンチにおいて,壁面の写真を図3−4−2−1図3−4−2−2図3−4−2−3,スケッチを図3−4−2−4に示した。スケッチ原図については添付資料として別添した.出現する地層は紋別地区のピット調査の項で分類した地層区分と同様にA1層,A2層,A3層,A4層,B1層,B2層,C1層,C2層,D層に区分した。以下にトレンチにおいて出現する地層について記載を行う。

(地層・構造記載)

紋別トレンチ(Tr3−1)

紋別トレンチではA1層,A2層,A3層,A4層,B1層,B2層,C1層,C2層,D層が観察された。A1層は耕作土でトレンチ全体に連続し地表から20〜40cmの深さが耕作によって攪拌を受けている。A2層は黒色腐植層で西側法面と北側法面のグリッドN1〜N13および南側法面のグリッドS1〜S13にかけて分布している。層厚は20〜60cmで西側に向かって厚くなる傾向を示すが,トレンチの東側では耕作擾乱によりA2層とA1層(耕作土)の境界は不明瞭である。南側法面のグリッドS15〜S16には楔状に黒色腐植層が分布する。ただし、対比については不明である。

A3層は砂質シルトもしくは細粒砂からなり北側法面のグリッドN6および南側法面のグリッドS8よりも西側と西側法面に分布する。層厚は最大で80cm,西側に向かって厚くなっている。A4層は黒色強腐植層で西側法面および北側法面のグリッドN13以西,南側法面のグリッドS13以西に確認される。N7〜N13、S8〜S13ではA2層と下位のA4層の境界は不明瞭である。A4層の基底は西に向かって順次高度を低下し、N13〜N11およびN3〜N5グリッドの間、S13〜S11およびS4〜S6の間で大きい。特にS4〜S3の間ではA4層基底は大きく落ち込み、間に弱い腐植質シルトが楔状に挟まれる。A4層上面はN3〜N5、S4〜S6の間でやはり西に向かって高度を下げる。これに対しA3層中の砂層は特に北側法面N1〜N5において水平であり、A4層にアバットするように見える。

B1層は西側法面および北側法面のグリッドN4より西側,南側法面のグリッドS4より西側に分布するローム質シルトである。層厚は20〜40cmで西側向かってやや厚く,礫が点在する部分も見られる。B2層は暗灰色の弱腐植質シルトで西側法面および北側法面のグリッドN3以西,南側法面のグリッドS7以西に分布が確認された。下部は礫混じりで,特に北側法面から西側法面にかけては下位層を削り込む大礫混じりシルト層を伴う。南側法面では削り込みは顕著ではないが,グリッドS7付近で下位のローム層を覆うように見られる。南側法面のグリッドS4付近ではA4層基底の構造に対応するように、砂質部が立ち上がっている。

C1層は淡褐色のローム層で北側法面のグリッドN5〜N20,南側法面のグリッドS7〜S13にかけて連続する。北側法面のグリッドN13〜N20にはローム層中に細礫主体の砂礫層やシルト質の細粒砂層が連続し,これをC2層とした。C2層の下位には淡褐色のローム層が見られ,層序からは砂礫層上位のローム層とは異なるものであるが,西側に連続するローム層との層序関係が,層相から区別することが困難であるためC1層として一括した。

C1層は50〜80cm層厚を持つが,北側法面のグリッドN13および南側法面のグリッド12で分布高度が大幅に変化し層厚もこの部分では1mを超える。S12ではローム中に下位のD層由来の砂礫が混じる.C2層はN13〜N17の間では淘汰の良い細粒砂で,層厚10〜20cmで変化が少ないがN13で屈曲し直立している。

D層はトレンチ全体に連続する砂礫層で,円〜亜角礫で構成されている。最大礫径は80cmを超え淘汰はさほど良くないが,部分的に細礫〜粗粒砂によるラミナが観察され,中粒砂〜粗粒砂層がレンズ状に堆積している部分も見られる。西から東へのインブリケーションも、一部を除き明瞭である。基質は砂優勢の部分が多いがシルトを多く含む部分も見られる。北側法面のN4から西側法面W4にかけては砂礫層中にラミナの発達する粗粒砂層が観察される。この粗粒砂層には炭化物やブロック状の腐植層やローム層が取り込まれている。この部分に見られるラミナはN60°E,22°Nの走向・傾斜を示している。また、N1〜N4、S1〜S7ではインブリケーションが不明瞭となり、礫層の構造がやや乱れている。明瞭な夾み(砂層等)が無いため不明瞭だが、水平方向に礫がよく連続する箇所でみると、この区間では全体として礫層が波状に撓みながら西に緩やかにたれ下がっているようにも見える。

N13〜N16,S12〜15の砂礫層中には扁平な礫が傾斜60°で連続する剪断面が確認された。この剪断面はC2層および上位のC1層に達しており、少なくとも上位のC1層まではこの剪断面で示される逆断層変位を受けたと判断される.D層上面はN13で90cm、S23〜S13で1.4mの落差が生じている。D層中の基質の差やラミナに見られる傾斜はほぼ水平なものであるが,断層付近で明らかな引きずり変形を示している。また,断層上盤の砂礫層中には上方に向かって放射状の礫配列が見られる。この構造にはずれは確認されないが断層活動による変形の可能性は高い。C2層はN13で90cmの落差であり、D層上面とほぼ同じである。B層中では断層面は認識できないが,S12およびN12〜N13ではA層下面に段差が認められる。段差はC2層およびD層上面に認められるものより有意に小さく、N12〜N13で50cm程度である。ただし、C層・D層ともN13〜N20、S13〜S20の区間では西に傾いており、トレンチ内のこの区間だけでも約1.8m程度の変位がD層上面に現れている。変位量を厳密に知るためには群列ボーリング資料との比較が必要である。

もう一つ特筆すべき構造は、N1〜N4、S1〜S7にかけて現れる楔状の水成堆積物(A3層)である。A3層は北側法面でA4層にアバット不整合の関係で累重している。A4層以下が西に下がる構造を持っているのにたいし、A3層ではそうした構造は認められない。南側法面でも、北側法面にくらべ構造が複雑だがA4層以下は堆積頂面が西へ下がったり、層厚が厚くなる構造が認められる。この関係はTP4−1〜TP4−3、平成14年度上野塚トレンチ下盤側で見られたものと極めて類似する。