ｔｉｔｌｅ

０　まえがき
北海道東部の知床半島基部火山性山地と根釧平野（根釧原野）の境界部には，５万分の１地質図幅調査などにより北東－南西方向の地質断層群とそれに付随する地層撓曲帯の存在が認められていたが，活断層研究会（１９８０；１９９１）はこれらを確実度Ⅱ・Ⅲの活断層として認定した．確実度は低いが，断層・撓曲群全体としては長さが５０ｋｍと長大であること，周囲では明治以降１９０７年根室北部の地震（Ｍ６．８），１９２６年根室支庁中部の地震（Ｍ５．６），１９６３年養老牛（中標津）の地震（Ｍ５．３），１９６４年羅臼群発地震（最大Ｍ４．６）など震源が浅い直下型地震が発生していることから注目され，国の地震調査研究推進本部により小判的調査観測を要する全国９８断層に“標津断層帯”として採用された．

北海道としては１９９５年阪神大震災以来、内陸活断層の活動による地震災害の発生が危惧されるとし，都市周辺の緊急に調査すべき主要断層帯として①増毛山地東縁断層帯，②函館平野西縁断層帯，③石狩低地東縁断層帯，④当別断層，⑤十勝平野断層帯，⑥黒松内低地断層帯，⑦富良野断層帯および⑧標津断層帯を取り上げ，国の地震関係基礎調査交付金を受けて調査を進めてきた．その結果，現在，①～④が調査完了，⑤～⑧が調査継続中（⑥は産業技術総合研究所活断層研究センターが実施）であるが，調査継続中のうち，⑤については本年度で本調査が完了した．

標津断層帯は空中写真判読を主体とした従来の調査（活断層研究会，１９８０；１９９１）では北から丸山西方断層，古多糠断層，開陽断層および荒川－パウシベツ川間断層などで構成するとされている．さらに，開陽断層の北部については西の山地から東の台地への地形変換部にあたる従来のリニアメントとは別に台地内に撓曲状地形の存在が指摘されている（中田・今泉編，２００２）．しかし，これらの調査では活断層としての存否・性状・活動度などについて不明確なことが多く，活動時期・活動間隔についてはなおさら全く不明の状態である．よって，本調査の主目的はこれらの諸点を現地調査で解明・確認することであり，平成１４年度の予察的な地形地質調査（文献調査・空中写真判読・現地予察）に続き，平成１５年度は地形地質調査（現地概査），物理探査（重力探査・浅層反射法地震探査）およびボーリング調査を行い，総合解析を実施した．

調査全般を進めるにあたり，地元，中標津町・標津町・羅臼町および根釧東部森林管理署にはご理解とご便宜をいただいた．その他，浅層反射法地震探査の実施にあたり，北海道開発局釧路開発建設部中標津道路事務所および北海道釧路土木現業所中標津出張所には道路占用の許可とご便宜はかられた．ここに，記して感謝の意を表します．