(3)トレンチ調査結果

中御料地区におけるピット調査の結果,ピットAにおいて断層の存在が明らかとなった.一方,ピットCでは,断層変位の可能性が示されたものの,有効な変位基準がみられないことから,確実性に欠けていた.そこで,ピットB及びピットCを拡幅し,トレンチ調査を実施した(図3−3−1).

トレンチの各法面のスケッチと写真を14C年代測定結果と併せて図3−3−7−1図3−3−7−2図3−3−8−1図3−3−8−2に示す.

トレンチ内の堆積物を,層相,構造,色調などから,上位より,A層,B層,C層,D層に区分した.

A層は,地形面に沿った表土とその下位の礫混じり黒色土壌であり,表土の最下部で約1000y.B.Pの14C年代値を示す.礫混じり黒色土壌では約3000y.B.P.の14C年代値が得られたが,この値は下位層の14C年代値よりも古いことから,再堆積によるものと判断した.

B層は,隆起側のみに分布し,ローム質砂層・礫層からなる.水平な層理が見られる.ローム質としたが,いわゆるロームではなく,構造の存在から流水により形成されたと考えられる.外形は,上に凸の形状をしており,縦州(longitudinal bar)堆積物の特徴に類似する.最下部で約1600y.B.P.の14C年代を示す.

C層は,主に大〜巨礫の円〜亜円層からなり,細礫層や砂層を挟在する.最上部にやや腐植質な部分が認められ,その14C年代は,約1800y.B.P.の値を示す.本層は,層相や構造から数層に細分されるが,連続の良い挟み層を欠くため,精度の良い地層区分が困難であり,一括した.

D層は,腐植質シルト層を挟在する固結度の高い礫層であり,14C年代は,約35000y.B.P.〜約30000y.B.P.の値を示す.

C層内の礫は撓曲変形を示すように回転しており,礫の配列や配列の不連続などから数条の東上がりの低角度逆断層が推定される.断層の傾斜は15°〜30°程度であり,地表に向かって分散する(spray)ようにみえる.C層の最上部までは,断層による変形を受けていることは確実である.

断層上盤の変形した礫層からなるC層を覆うB層には,水平な層理が見られることから,B層はC層を不整合で覆っていると考えられる.なお,A層下部の礫混じり黒色土壌も,C層の変形と調和的に,撓み状を呈するものの,表土であり地表面なりに発達することから,変位の有無は不明である.

以上のことから,本トレンチにおける最新活動時期は,C層最上部形成以降,B層堆積前であると考えられ,その年代は14C年代値から約1800年前以降,約1600年前以前となり,本地区のピットAにおける結果と整合的である.

本トレンチ北側法面において,C層最上部に挟在する細礫層基底面の鉛直変位量は約1mであり,この変位量は本トレンチ地点における逆向き低崖の比高約1mとほぼ一致する.このことから,本地点における地形面は最新の1回のみの活動を被っている可能性があり,この場合,その活動時における鉛直変位量は約1mとなる.

最新活動以前の活動時期に関しては,有効な変位基準が認められないため,不明である.