4−7 解析結果まとめと今後の調査計画・課題

平成14年度調査によって,断層帯南部の光地園断層では,過去1万8千年前以降に複数回の活動が認識できた.トレンチヶ所の地質状況の制約により,最新活動期および活動間隔を得るには至らなかった.しかし,この結果は,十勝平野断層帯が少なくともその一部では最新期にも活動を繰り返していることを初めて明らかにしたものであり,断層帯全体の活動度を評価する上で極めて意義深い.その一方で,断層変位による可能性がある地形が低位段丘面に存在する旭断層,途別川断層においては,対照的な結果が出ることとなった.断層帯中部の旭断層では,すくなくとも過去1万3千年間には断層運動が無かった可能性が高いことが判明した.リニアメント周辺の地形地質状況により,少なくとも過去数万年前までの断層活動の有無を検討することは現時点では困難である.一方,途別川断層においては,断層地形の可能性があると考えられた地形群は,十勝平野中部に発達する後期更新世テフラを母材とする”古砂丘”であることが判明した.十勝平野断層帯中部においては,少なくとも地下深部(深度1000m前後程度まで)では渋山層,池田層を始めとする中期更新統〜中新統の傾動運動は確実に存在するが,最新期の活動を示唆する科学的証拠には乏しく,現時点では検討困難であるというしかない.その他,押帯断層を始めとする十勝平野断層帯北部の断層群については,地形地質状況が極めて悪く,同様に後期更新世以降の活動度の評価は困難であった.すなわち,十分な根拠を持って活断層であると呼べるのは光地園断層のみであり,その他については,第四紀断層ではあるが,活断層であると判断するに十分な根拠があるとは言えない.

今後は,最新期の活動の存在が示された光地園断層について,その最新活動期・活動間隔・単位変位量を明らかにし,将来的に活動するポテンシャルを持つ起震断層としての能力を評価することが必要不可欠である.その一方,既存の地形地質調査,トレンチ調査等で対応できない活断層群について,その活動度を科学的に評価する画期的手法の開発が望まれる.

なお,これらの課題をうけて設定した,平成15年度調査計画について,図4−2−1に示す.