(5)豊田測線(R5)

マイグレーション後の深度断面から本測線の反射構造は次のように考えられる。反射面の分布は測点350付近を境に西側の成層構造を有する反射パターン区間と東側の不明瞭ながらも東上がりの反射パターン区間に大きく2分できる。

西側の測点1−350では、標高−1300m付近まで成層構造を有する反射面が分布しており、反射面の分布密度・屈折トモグラフィー解析による速度分布から、深度方向に大きく分けて4つの反射面に区分できる。

西側@ 表層〜標高100m程度の範囲:反射面が認められず、弾性波速度は1600m/sec以下である範囲。この範囲は、探査仕様により分解能が悪い可能性もあるが、弾性波速度が遅いという点で一つの地質を構成している可能性が高い。

西側A 標高100〜50m程度の範囲:反射面の連続性が良く、間隔が比較的短く、長波長の凹凸を繰り返しながらも、ほぼ水平な範囲。ただし、測点(253−)280−323では標高100m付近の反射面が明瞭であり、その下位の反射面は不明瞭となる。また、弾性波速度も速い。弾性波速度の速い範囲は測点220−335程度でありこの区間では地質が異なる可能性がある。

西側B 標高50〜−500m程度の範囲:反射面の間隔が比較的長く、反射面の小規模な屈曲が認められるものの、全体に西に向かって緩やかに傾斜している範囲。

西側C標高−500以深の範囲:全体に反射面は断続的であるが、反射面の間隔が長く、長周期の凹凸を繰り返し、大局的には西に向かってやや傾斜している範囲。

東側については、層区分は難しいが、東上がりの傾向が深度方向に行くにしたがって大きくなる傾向が認められ、これは、地層の傾斜の累積性を示している可能性が高い。また、東側では、標高150m以上で1200〜1300 m/s以下と弾性波速度が極めて遅い。

反射面と地質の対比は岡(1999,2000)を用いた。それによればR5付近では表層から深度10〜15m程度が段丘堆積物、それ以深は渋山層・芽登凝灰岩・池田層である。段丘堆積部と池田層の境界面は西側@の内部に含まれており反射面として抽出することはできない。したがって、反射面が確認できる範囲は全て渋山層ないしその下位層とみてよい。

道立地質研究所の調査資料によれば、測線上には東側より、南北方向に伸びる士幌川断層,稲穂断層,音更川−札内川断層が位置していおり、それぞれ測点360−390,185−200,100−110に西傾斜の撓曲崖が示されている。 マイグレーション後の深度断面上では、士幌側断層と考えられる地下構造は地層の傾斜の累積性として読みとることが出来るが、稲穂断層,音更川−札内川断層については、構造運動の存在を類推させる積極的な証拠は得られなかった。

不自然な反射面としては、測点82付近の地表〜標高−400m付近にまで認められる東傾斜の反射面が最も顕著である。