(2)上野塚地区

<地層記載>

トレンチ壁面写真を図V−4.1.11,12,1314に,トレンチスケッチを図V−4.1.15,16,17,18に示す.トレンチに出現する地層はA1層、A2層、A3層、A4層、A5層、B1層、B2層、B3層、C層、D1層、D2層、D3層、D4層、D5層、E1層、E2層、E3層である。

A1層は、層厚30〜40cmの黒色砂混じり腐植層で、耕作による撹乱を受けている。A2層は北側法面ではグリット12から西側に、南側法面ではグリット17より西側に確認され、東側では耕作による撹乱を受けている。南側法面のグリット10ではA2層を削り込む小規模な溝状の凹地を、砂層が埋積していることが観察される。A2層は南側法面では2層のやや弱い腐植層を挟んでいる。また、A2層の最上部には白色の粗粒火山灰が極めて断片的に認められる。

A3層は北側法面のみに確認される地層で、ブロック化したローム層と撹乱された腐植層が下部層がくぼんだ凹地に堆積している。この地層の堆積環境および凹地の成因については不明だが,その形態から,倒れた樹木の根跡である可能性がある。A4層は北側法面のグリットN8および南側法面のグリットS9よりも西側に分布する弱腐植質のローム質もしくはシルト質の地層で層厚は最大で50cm程度である。

A5層は暗褐色の腐植層で、北側法面もしくは東側法面では、グリット16より西側の耕作土直下に断続的に分布する。南法面では、グリッド11より西側に分布する。この腐植層の下面は植物の撹乱による凹凸が見られる。南側法面では下部がやや弱い腐植質となっている。

B1層はトレンチの幅全体に連続する細礫混じりのローム層となっている。細礫はわずかにラミナを形成する部分も見られるがほとんどの場合点在状態である。トレンチ内では、この地層に層厚の変化は見られず約50cm程度の厚さを示している。

B2層は南北の法面においてグリット6より西側のみに見られる、極めて弱い土壌化を示す暗褐色のローム層である。層厚は最大で20cm程度である。B3層は層厚30〜70cmの褐色ローム層で、トレンチ全体に連続する。

C層はローム質シルトと火山灰質細粒砂のやや不規則な細互層である。砂層中には細礫が含まれる部分があり、まれに粗粒砂や細礫がレンズ状に堆積しているのが観察される。単層の厚さは、2cm〜20cm程度であるが、地層全体の層厚はトレンチの東側と西側で大きく変化する。東側では上部が削剥されており、東法面では10cm足らずのシルト層もしくは砂層となっているのに対し、トレンチ西側、特にグリット10よりも西側では、1m以上の厚さとなっている。

D1層は暗褐色のやや土壌化したローム層で、トレンチの東側法面と南北法面のグリット13より東側に分布している。層厚は20cm前後である。D2層は褐色のローム層であり、トレンチ全体に連続する層厚は10〜40cmで層相・層厚の変化がほとんどない。

D3層は橙褐色のローム質極細粒砂であり、トレンチ全体に層厚50〜80cmで連続している。D4層もトレンチ全体に連続する層厚20〜40cmの橙褐色シルト質ローム層となっている。D5層はトレンチの北東側、北側法面のグリット19より東側と、東側法面のグリットE8〜E10付近に見られる軽石混じり粗粒砂層である。D1〜D5層のうち、D3,4,5層の層厚はトレンチ内ではほとんど変化がない。

E1層はマトリックスがシルト優勢な砂礫層で、上部のマトリックスはローム質シルトとなっている。含まれる礫はやや礫径が小さく、層厚は20〜1mとなっている。E2層はマトリックスが砂優勢な砂礫層で、比較的連続の良い粗粒砂層をレンズ状に挟んでいる。層厚は30〜1mで含まれる礫はやや大きい。

E3層はマトリックスがややシルト優勢な砂礫層で、層厚は最大2m以上である。上位砂礫層に比べると巨礫の含まれる割合がやや大きく、東側法面のグリットE5〜E10および北側法面のグリット17,18にかけては橙色の火山灰を大量に含むシルト・細粒砂の互層がレンズ状に堆積しているのが観察される。