3−1−6 まとめ

文献調査・空中写真判読・地表踏査(概査)を押帯断層,東居辺断層,士幌川断層,音更川−札内川断層,稲穂断層において,地表踏査(精査)を旭断層,途別川断層において,ピット調査を旭断層,途別川断層,光地園断層において実施した.

文献調査・空中写真判読・地表踏査(概査)対象断層については,少なくとも押帯断層・東居辺断層・士幌川断層については中部更新統ないしそれ以前の海成層〜陸成層である池田層,芽登凝灰岩,渋山層に傾動が認められた.これらが第四紀断層である可能性は高い.

しかしNa−t3面(Toyaを乗せる面:105ka),Na−t4面(Spfa 1を乗せる面:41ka)およびそれより新しい地形面・ないし沖積層については,地形変位が存在する確実な根拠は存在しない.たとえば国土地理院による活断層の定義「最近数10万年間に、おおむね千年から数万年の間隔で繰り返し動いてきた跡が地形に現れ、今後も活動を繰り返すと考えられる断層」に照らせば,これらは活断層と呼ぶべきものではない可能性もあろう.特に東居辺断層に関しては変位速度速度が大きく低下している可能性が指摘できる.稲穂断層・音更川−札内川断層に関しては,それらが第四紀断層である根拠も指摘することはできない.

地表踏査(精査)・ピット調査では,旭断層では池田ほか(1997),越後ほか(2002)により”撓曲崖”とされた東側が高まる地形は,実際には北に開いた半ドーム状を成していること,”撓曲崖”の上盤側ではTa−d〜Ko−gテフラより上位に厚い泥炭層が発達するのに対し,下盤側では泥炭の発達が極めて悪く堆積相も異なることから,離水年代が上盤側−下盤側でわずかに異なる可能性,ないし離水後の地下水−表層水の状態の違いによる差別的な泥炭形成場の出現といった可能性を検討する必要が出てきた.ただし,上盤側泥炭層が断層変位により構造的に厚化したものである可能性も現時点のデータでは完全に否定することはできない.この地形が,断層変位によるものか,離水年代のわずかな違い/離水後の地形面堆積物発達史の違いによるものか,引き続きボーリング調査,トレンチ調査により慎重に確認する必要があろう.

途別川断層では,東郷(2000)等により示されたMa−t8面上の東上がりの起伏が断層変位地形である可能性を検討した.この起伏はSpfa 1等の二次堆積物(デューン堆積物)から形成される一方,起伏の西に分布する低地では後期更新世テフラは認められない.起伏はそれぞれが著しく長軸の長い楕円形ないし涙滴状の形態をもち帯広周辺でその存在が指摘されている”帯広古砂丘”とその形態がよく似る.これらは後期更新世最末期に形成された古砂丘である可能性が高く,地表の地形そのものは断層変位を必ずしも示さない可能性がある.言い換えれば,これらの起伏もまた,段丘面離水タイミングの微妙な違いと離水後の地形発達史(この場合は砂丘形成)により形成されたものである可能性があると言える.しかし,より深部の段丘礫層および基盤岩上面の形状は現在のところ不明である.引き続き,ボーリング調査により地価浅部の構造(基盤上面・段丘礫層堆積頂面,等)を確認する必要がある.

光地園断層では上野塚地区におけるリニアメントの連続性について,平成13年度調査よりさらに詳細に示すことができた.また,平成13年度調査で中位段丘面の測量に地形面高度からみた変位が認められないと見なした丘陵において,浸食等で詳細な検討は困難ながらも,地形面変位の結果と解釈可能な比高差の違いがリニアメントを夾んで存在することが示された.その一方で,特に野塚川北岸のリニアメントについてそれが段丘崖である可能性が出てきた.

旭断層・光地園断層については,調査の結果,断層変位の可能性が否定できないヶ所がそれぞれ存在する.それらの存否は段丘礫層およびそれ以深の地下浅部の調査により確認可能であり,ボーリング調査・トレンチ調査によってそれは可能である.また,途別川断層では段丘礫層および基盤岩上面高度について検討の余地が残された.よって旭断層・光地園断層をボーリング・トレンチ調査の対象とし,途別川断層に関してもボーリング調査を実施し地下浅部の構造をより詳細に把握することを目指すこととする.