(3)士幌川断層

(1)地形面堆積物

リニアメント付近には,地形判読よりNa−t2,Na−t3面,Na−t4面が分布する.いずれの地形面堆積物も,礫層より上位には白色粘土層とローム層が累重する.Na−t3,Na−t4面堆積物では,白粘土より上位のローム層中にはまれにSpfa 1に類似する火山ガラスが含まれることがある.

(2)地質と断層露頭

リニアメント付近には,池田層,芽登凝灰岩,上然別凝灰岩,渋山層(図3−1−3−15図3−1−3−17)が認められる.音更町東平和東方の火山灰採取場では,極うすい再堆積物を夾んで,芽登凝灰岩の上位に上然別凝灰岩が累重する露頭が確認された(図3−1−3−16).活断層露頭は3ヶ所で見いだされたが,いずれも変位しているのは中期更新統である.一ヶ所は士幌町東台〜音更町柏葉の東方にかけての地域であり,このうち士幌町東台ではリニアメントと直交するルートで渋山層が西落ち46°で傾斜する露頭が見いだされた(図3−1−3−15).もう一ヶ所は音更町東士幌の北方である.ここでは芽登凝灰岩の再堆積物が西落ち36〜44°で傾斜する露頭が見いだされた.この露頭は池田層および芽登凝灰岩の構造から推定される鮮新統〜中期更新統の傾動帯上に位置するが,空中写真判読で認識された士幌川断層リニアメント南方延長(士幌川方面へ延びるリニアメント)から東へ1km程度ずれている(空中写真判読によるリニアメント上では,地表踏査では芽登凝灰岩,渋山層および段丘面堆積物の傾動・撓曲は見いだせなかった).地質構造的な傾動構造は,さらに南方へ延びていることを示す.後期更新統以降が変位している露頭は見いだせなかった.

(3)変位量と平均変位速度

地形面からは,士幌川断層リニアメントを境に地形面が異なる場合が多く,変位基準として使用できない.図3−1−3−11図3−1−3−12図3−1−3−13で示される地形断面はいずれもリニアメントを成す段丘崖についてその比高差を得るために実施したものである.このため,士幌川断層に関して科学的・定量的に活動度を見積もるための平均変位速度は算出できない.この付近では坑井資料も乏しく地下構造に関する情報がないため,芽登凝灰岩の分布,構造からも垂直変位量の算定は困難である.