（２）地形地質

十勝平野に関する地形学的な研究は，平川・小野（１９７４）および十勝団体研究会（１９７８）により行われている．ただし平川・小野（１９７４）は十勝平野の中〜南部を対象としており，北部に関する研究資料としては十勝団体研究会（１９７８）が主要なものとなる．活断層研究会（１９９１），東郷・小野（１９９４），東郷（２０００）などによる変動地形に関する研究も，地形面区分に関してはおおむね十勝団体研究会（１９７８）によっている．十勝平野断層帯中部付近では，河岸段丘は古いものから順に，光地園面，幕別面，上更別T面，上更別U面，上更別V面，上帯広T面，上帯広T’面，上帯広U面，上帯広V面，上帯広W面，および沖積面に区分されている．上更別V面はＴｏｙａテフラを，上帯広T面はＳｓｆａ〜Ｓｐｆａ １を，上帯広T’面・上帯広U面はＥｎ−ａを，上帯広V面はＴａ−ｄを載せる面とされる．一方，十勝団体研究会（１９７８）によれば，十勝平野北部では河岸段丘群は下位から上旭が丘面，北居辺T面，北居辺U面，鈴蘭面，駒場面，上士幌面，現河床面に区分される．

十勝平野においては，地質構造の解析から，更新世に入ってからも構造運動が継続している可能性（図３−１−１−１）が指摘されていた（岡，１９８２；松井・松澤，１９８５；岡，１９９９；２０００；２００１）．また，重力探査の結果も，十勝平野において平野東縁に基盤岩の隆起帯が存在すること，盆地中央部が大きく沈降し，なんらかの構造運動が存在することが示唆される（図３−１−１−２）．岡（２０００）によれば，帯広〜幕別にかけて，前期〜中期更新世の火砕流堆積物などの地層群の深度が，幕別台地などで大きく上昇していることがすでに示されている．一方，地形学的見地からは，平川・小野（１９７４）により，すでに後期更新世の段丘高度の解析に基づいて活構造の存在が指摘され．活断層研究会（１９８０；１９９１）により十勝平野全域についての活断層の分布，東郷（１９８２）により光地園断層の存在の可能性が指摘された．その後，東郷・小野（１９９４），東郷（２０００）により活断層分布の見直しが，越後ほか（２００１）により旭断層の地形変位量の検討が，越後（１９９９）により地形面対比に基づく平均変位量の概要が示された．また，越後ほか（２００２）による浅層反射法地震探査で，途別川断層が当初想定されていたよりもさらに南方へ延びていることも示された．

断層帯北部に関しては，東郷（２０００）により稲穂断層が，国土地理院（２００２）により士幌川断層の南方延長部にリニアメントの存在が指摘される一方，音更川−札内川断層は活断層として見なされなくなった．押帯断層，東居辺断層についてはその分布の再検討が成されている．

　しかし，これらの検討では，断層周辺の詳細な地形地質調査が行われていないこと，ごく一部の例を除き，段丘の年代にはほとんど根拠がないことのため，断層群の活動度のパラメータを十分に押さえられているわけではなかった．