3−3−4 反射探査結果

前節までに述べた測定及び得られたデータの処理・解析に基づき,八線測線及び東鳥沼測線のそれぞれについて,重合後の時間断面図,マイグレーション後の時間断面図及び深度断面図を作成した.深度断面については,通常の表示方法のほかに,相対振幅強度をカラーで表示した断面図も作成した.相対振幅強度のカラー表示とは,断面の各トレースの振幅をその大きさに応じた色で表示したものである.通常の表示では,大きい振幅は隣のトレースの上に描かれるため細部が不明瞭となるが,この表示方法では,細部が明瞭となり,また,負の振幅も情報として得られる.

 作成した断面図は,以下のとおりである.

@ 八線測線

図3−4−1 重合後時間断面図

図3−4−2 マイグレーション後時間断面図

図3−4−3 深度断面図(縦:横=1:1)

図3−4−4 深度断面図(カラー表示,縦:横=1:1)

図3−4−5 深度断面図(カラー表示,縦:横=2:1)

A 東鳥沼測線

図3−4−6 重合後時間断面図

図3−4−7 マイグレーション後時間断面図

図3−4−8 深度断面図(縦:横=1:1)

図3−4−9 深度断面図(カラー表示,縦:横=1:1)

図3−4−10 深度断面図(カラー表示,縦:横=2:1)

なお,上記の重合後時間断面図,マイグレーション後時間断面図及び深度断面図(通常)は,縮尺1/5,000で作成したものを付図として巻末に添付した.

八線測線の解釈図を図3−4−11に示す.

本測線において,中富良野ナマコ山断層が示されている位置では,少なくとも標高‐500m程度以浅では,断層による反射面の切断はなく,撓曲構造となっていることが明らかとなった.地表のデータとの対比から,同撓曲帯の東縁で約45°の東傾斜を示す十勝火砕流堆積物(約1.4Ma)は,盆地内では標高‐300m〜‐400m程度に埋没しているものと推定される.また,盆地内で標高約‐300m以深の各反射面は,ほぼ平行な撓曲構造を示すが,標高約‐300m以浅では,撓曲部に向かって,各反射面間の間隔が狭くなっており,この撓曲の開始時期は,標高約‐300m付近の反射面形成直後,すなわち,十勝火砕流堆積物直後の可能性がある.

御料断層が示されている位置では,その西側の反射面が東方に傾斜し,CMP番号450付近ないし530付近で不連続となることから,同位置付近に表層部まで達する東上がりの逆断層が存在する可能性がある.CMP番号450付近〜530付近の間では,反射面が乱れているため,断層の位置が特定できない.また,後述する本測線の北方の中御料で実施したボーリング調査結果によると,NG‐5孔において,深度43m付近で十勝火砕流堆積物の上面が確認されていることを考慮すると,同火砕流堆積物は下位層の上面の凹凸を埋めて堆積しているものと考えられる.一方,西方では,CMP番号110付近に断層が推定される.

東鳥沼測線の解釈図を図3−4−12に示す.

本測線では,CMP番号620付近から東側で,地表部から標高0m付近まで,若干西傾斜を示し連続の良い反射面が認められ,これが十勝火砕流堆積物に相当するものと考えられる.

一方,八線測線において十勝火砕流堆積物が標高‐300m付近まで埋没しているものと推定されたことを考慮すると,本測線の盆地側では標高‐200m付近の反射面が十勝火砕流堆積物の上面に対比される可能性がある.この場合,山地側の十勝火砕流堆積物は標高300m付近まで分布していることから,盆地側と山地側とで,同火砕流堆積物の上面に約500mの高度差があることになるが,CMP番号270付近からCMP番号620付近にかけて,反射が不明瞭であることから,この高度差が断層によるものか否か,確実ではない.