(4)上野塚地区

−対比および考察−

上野塚地区で実施したボーリング調査の結果を図3−3−1−13に示した。

ここでは、出現する地層について、便宜的に上位から、表土・盛土・表層腐植土をA層、各孔にほぼ同程度の層厚保で分布するローム層をB層、B−4−3,B−4−4孔においてローム層直下に堆積しているローム質シルトをC層、B−4−1,B−4−2およびB−4−5孔においてローム層の直下に分布する軽石質細〜中粒砂をD層、各孔に分布する砂礫層のうち上位の砂礫層(マトリックス、シルト優勢)をE層、下位の砂礫層(マトリックス、砂優勢)をF層、B−4−1,B−4−2,B−4−3,B−4−5の各孔最下部で確認された、礫岩・砂岩・泥岩をG層(豊似川層)とした。

逆向き低断層崖下位には豊似川層が確認され、中の川層と地質断層である広尾断層は確認されなかった。すなわち,地質断層の位置と崖の位置は一致しなかった.

各孔に分布する砂礫層は、Spfa−1降下以降に堆積・段丘化した最終氷期後半の段丘堆積物(平川・小野、1974の上帯広U面)に対比される可能性が高い。この段丘堆積物は調査地点中央に観察される逆向きの低崖(リニアメント)を境界として分布高度に明瞭な差が認められる。このリニアメントの西側および東側では、いずれも砂礫層の頂面が現地形とほぼ平行になっているが、調査地点における地形の高度差は1.5から2.0mであり、砂礫層頂面の連続から求められる地層の高度差は約3mである。

リニアメント東側のボーリングコア3孔には砂礫層の直上に10〜30cmの層厚で軽石質の中粒砂(D層)が認められるが、リニアメント西側ではこれが見られず、これに代わって、砂礫層の直上には、細礫・砂混じりのローム質シルト(C層)が堆積している。このことから、砂礫層の頂面に認められる高度差はD層堆積後、C層堆積以前に形成された可能性が高い。ここで、C層の堆積が大きな削り込みを持たないとするならば、この高度差3mは断層活動によって形成された可能性は高いとされ、地表面で見られる高度差はC層の堆積によって本来の高度差の一部が失われたと解釈することもできる。

これらを明らかにするためには、中の川層を確認し広尾断層トレース位置を明らかにするボーリング調査、高度差3mの断層トレースを確認するための群列ボーリング及びトレンチ調査により、証拠を取得していく必要がある。

注4

調査地点における地形の段差は1.6〜2.0m程度であるが、この高度差は砂礫層頂面の高度差とは一致しない。これは、砂礫層の頂面に形成された高度差3mをC層が完全に埋積していないために起こったものと考えることも可能だが、一方で砂礫層の頂面に発生した高度差が2m程度で、これをC層が完全に埋積し、その後さらに1.5m程度の高度差が発生したとすることもできる。この場合、高度差を形成する原因が断層活動と限定できれば、この地点での活動履歴は軽石質中流砂堆積後2回もしくは2回以上となる。

B−4−5孔とB−4−3孔では基盤岩の出現深度に約6mの高度差が認められる。この高度差が断層によって形成されたとすれば、砂礫層の堆積時に1回以上の断層活動が起こった可能性も考えられる。しかし、2点間の距離が離れているため、砂礫層基底の高度差については差別的な侵食も考えなければならない。従って、基盤岩の高度差による累積変位の議論は十分な根拠を持たないとすべきである。

これに対して、豊似川層に見られる高度差は、河川の浸食が泥岩の部分で深く削りこんだために発生し、砂礫層の高度差はC層基底における侵食によって起こったとする解釈も断面図上では成立する。