(2)判読結果

(1) 地形概要と地形面区分

[南東セグメント]

本地域は,長流枝内丘陵から十勝川流域の沖積低地を経て,幕別台地を通り豊頃丘陵に至る台地〜丘陵地,およびそれらの西側に広がる広大な扇状地・河岸段丘群および低い丘陵からなる(図3−1−2−1).長流枝内丘陵は標高150〜200m前後の緩やかな丘陵地形を成し,丘陵上は標高200mで標高のそろった尾根とやや傾斜の急な丘陵末端部から構成される.幕別台地は標高200m前後の台地であり,頂部の平坦面は開析の進んだ段丘面を成す.豊頃丘陵は頂面標高が150〜300mであり,頂部には開析の進んだ段丘が認められる.長流枝内丘陵,幕別台地と比べ,丘陵を開析する河川の谷壁はやや急峻になる場合がある.これらの丘陵・台地の西側は士幌川,音更川,札内川,猿別川などの河川により開析されるゆるやかな扇状地と河岸段丘から構成されるが,豊頃丘陵の西方には標高200m前後,扇状地面からの比高20〜50m前後の小規模な低い台地状の丘陵が認められる(上更別丘陵).

この地域に分布する段丘面は,以下のように区分される.

Ma−t1面:長流枝内丘陵〜幕別台地の頂部,および豊頃丘陵西方の低い丘陵に広く分布する.一般に開析が進み,段丘の縁辺部は斜面化している.また,段丘面を成す平坦面でも比高5〜20m前後の小起伏が発達する.段丘面の標高は幕別台地で130〜150m,南ほど高度が上がり,豊頃丘陵西方では200m前後に達する.なお,幕別町駒畠付近に広がるMa−t1面は,糠内川による浸食が想定される地域を除くと,豊頃丘陵から非常に緩く西傾斜している.これは,十勝平野の一般的傾向(東〜北東傾斜)とは逆である.駒畠付近のMa−t1面は,豊頃丘陵の開析に伴い形成された扇状地ないし斜面の可能性もある.

Ma−t2面:長流枝内丘陵〜幕別台地,および豊頃丘陵西方に広く分布する.開析が進み,段丘の縁辺部は斜面化している.段丘面を成す平坦面にも比高5〜15m前後の小起伏が発達するが,Ma−t1面に比べると地形の保存状態は良い.段丘面の標高は幕別台地で90〜100m,南ほど高度が上がり,豊頃丘陵西方では170〜180m前後である.帯広空港〜上更別地域では,この面上にSpfa 1を母材とする古砂丘の発達が著しく,比高最大10mにおよぶ起伏が全面に形成されている.なお,駒畠付近に広がるMa−t2面は,同地区のMa−t1面と同様に,糠内川による浸食が想定される地域を除き非常に緩く西傾斜している.駒畠付近のMa−t2面もまた,豊頃丘陵の開析に伴い形成された扇状地ないし斜面の可能性もある.

Ma−t3面:長流枝内丘陵〜幕別台地,および豊頃丘陵西方にかけて,Ma−t2面の周辺に分布する.開析の程度は弱い.猿別川左岸の幕別町糠内〜幕別町以平町にかけて,標高150〜160m,猿別川の現河床面からの比高60m程度で猿別川に沿って分布するMa−t3面では,北北東−南南西方向に延びるトラフ状の凹地が認められる.この凹地は,糠内の南西2.5kmの地点で猿別川の沖積低地と合流する.これは,Ma−t4面形成時の猿別川の旧河道地形を見ている可能性がある.帯広空港〜上更別地域では,この面上にSpfa 1を母材とする古砂丘の発達が著しく,比高最大10mにおよぶ起伏が全面に形成されている.

Ma−t4面:長流枝内丘陵〜幕別台地にかけて分布するほか,忠類村朝日付近にも分布する.長流枝内丘陵,幕別台地北部〜東部では現河床からの比高は30〜40m前後であり,狭いながらも地形の保存はよい.一方,幕別台地南西部の帯広市古舞付近からはしだいに現河床からの比高が下がり,帯広市以平町付近では途別川沿いの沖積面下に没するように見える.忠類村朝日では,東北東に緩傾斜する小起伏面として認められる.開析がやや進んでいるものの,Ma−t4面より5m程度低い標高を持つ地形面が存在するように見える.上更別地域では,この面上にSpfa 1を母材とする古砂丘の発達が著しく,比高最大10mにおよぶ起伏が全面に形成されている.

Ma−t5面:幕別丘陵〜上更別丘陵の猿別川沿いおよび幕別丘陵北部に断片的に分布するほか,忠類村朝日付近にも分布する.幕別台地付近では現河床からの比高は30m程度であり,地形の保存は良好である.豊頃丘陵また,長流枝内川流域にも,この面に対比される可能性のある小規模な段丘面が認められる.忠類村朝日では,東北東に緩傾斜する小起伏面として認められる.開析がやや進んでいるものの,Ma−t5面より5m程度低い標高を持つ地形面が存在するように見える.

Ma−t6面:忠類村市街付近に広く分布するほか,長流枝内川,十勝川,猿別川沿いにも小規模に分布する.現河床からの比高は長流枝内川,十勝川,猿別川流域では15〜20m程度である.地形面は良好に保存されている.

Ma−t7面:帯広空港付近,忠類村市街に広く分布し,サラベツ川南岸にも断片的に分布する.地形面は良好に保存されているが,帯広空港付近では,この面上にSpfa 1を母材とする古砂丘の発達が著しく,比高最大10mにおよぶ起伏が全面に形成されている.

Ma−t8面:札内川東岸にNNE−SSW方向に延びて分布するほか,帯広市上以平,猿別川流域の幕別町糠内付近でも発達する.地形面は良好に保存されているが,上以平付近ではSpfa 1を母材とする古砂丘の発達が著しく,波上〜島状の小起伏(最大比高10m程度)が全面に形成されている.

Ma−t9面:サラベツ川南岸に広く分布するほか,各河川にそって小規模に認められる.面上にはほとんど起伏は認められず.良好に地形面が保存されている.この面では,Spfa 1を母材とする古砂丘は小規模なものがまれに認められる程度である.

Ma−t10面:札内川流域に比較的広く認められるほか,長流枝内丘陵,猿別川流域に狭小な面として分布する.地形の保存は非常に良好である.

Ma−t11面:各河川の流域に,狭小に断片的に分布する.現河床からの比高は10m前後である.

Ma−a1面:沖積面として猿別川流域に点在する.極小規模なものが多数認められるが,付図1では比較的広い面を形成している場合に図示した.

Ma−a2面:沖積面として,猿別川流域に点在する.極小規模なものが多数認められるが,付図1では比較的広い面を形成している場合に図示した.

これらのうち,Ma−t1〜t4は高位面,Ma−t5〜t7は中位面,Ma−t7〜は低位面に相当すると考えられる.

[南西セグメント]

この地域は,北部と南部で地形単元が異なる.北部は開析が進んだ扇状地および河岸段丘からなる.これらの扇状地・段丘の多くはゆるやかに東北東へ傾斜する.南部は西側の標高200〜500m前後の丘陵(紋別−広尾丘陵:十勝支庁農業振興部,2001)と,東側の河岸段丘群からなる.海岸線付近には,局所的に海岸段丘が認められる.紋別−広尾丘陵は紋別川,豊似川,野塚川,楽古川などの東流するいくつかの河川,およびそれらの支流として樹枝状に発達する小河川により開析される.丘陵頂部には,標高300〜450mの平坦な開析の進んだ段丘面が認められる.東部の扇状地面は,紋別川などの東流河川による段丘化が進んでいる.

この地域に分布する段丘面は,以下のように区分される.

Hi−t1面:歴舟川と紋別川に挟まれた大樹町光地園付近の標高300〜400m前後の丘陵地に分布する.段丘面はゆるく北東に傾斜し,面の連続性は良い.しかし地形面の開析によりこの面は比高5〜20m前後の小起伏面となっている.また河川の源頭ではスプーン状の凹地が発達し,地形面の幅が100〜200m以下に狭くなっている場所では面の幅が広い場所に比べ5〜15m程度比高の低い平坦面が形成されている.なお,更別村更南にも,著しく開析の進んだ段丘が断片的に認められる.この段丘もHi−t1面に相当する可能性があるが,詳細は不明である.

Hi−t2面:更別町更南付近に分布する.非常に開析がすすみ,地形面上には網状に発達した旧河道により比高10〜20m前後の小起伏がくまなく形成されている.

Hi−t3面:大樹町光地園の北部に,歴舟中の川河床からの比高120mの小平坦面として認められる.

Hi−t4面:広尾町カシュンナイ付近に断片的に分布する.現河床からの比高は40〜50mである.

Hi−t5面:広尾町カシュンナイ付近に比較的広く分布する.また,紋別川〜豊似川にかけての丘陵地縁辺と楽古川付近で,稜線上に断片的に小平坦面として残されている.

Hi−t6面:紋別川〜楽古川流域の丘陵地縁辺部に分布する連続性の悪い平坦な段丘面を指す.Hi−t7面:野塚川〜楽古川流域にかけて広く分布する段丘面である.地形面は比較的良く保存されている.

Hi−t8面:広尾町紋別に広く分布する.平坦面の保存は比較的良いが,旧河道地形が発達し,比高1〜4m程度の小起伏が多数形成されている.

Hi−t9面:広尾町紋別〜楽古に広く分布する.平坦面の保存は比較的良いが,旧河道地形が発達し,小起伏が多数形成されている.Hi−t8面,Hi−t10面との境界は極めて不明瞭である.

Hi−t10面:広尾町紋別〜楽古に広く分布する.平坦面の保存は良いが,旧河道地形が発達し,比高1〜3m程度の小起伏が多数形成されている.また,豊似川,楽古川,野塚川により南側,北側を削られ,比高2〜5m程度のシャープな段丘崖が形成されている.Hi−t8面,Hi−t10面との境界は極めて不明瞭である.

Hi−a1面:各河川に沿って広く分布する.平坦な地形面が良く保存されているが,楽古から野塚にかけては,旧河道地形が発達し,東西〜北西−南東方向に延びる多数の凹地が形成されている.

Hi−a2面:各河川に沿って広く分布する.

(2) 変位地形

[南東セグメント]

活断層の可能性があるリニアメントは,N−S〜NNE−SSWないしNNW−SSE方向に延びる.これらはそれぞれ併走ないしやや斜交する撓曲崖ないし地形面の傾動として認められる.以下,それぞれの変位地形について述べる.

・旭断層

N−S〜NNW−SSEの走向で約2.5kmの延長を持ち,音更町栄から音更町東旭にかけて分布する.西側が落ちた,幅100〜300m前後,落差数m〜30mの撓曲崖を成す.Ma−t4面,Ma−t11面,Ma−t12面に変位を与えている.旭断層のリニアメントの北方延長,長流枝内川右岸の標高80m前後の段丘にもNW−SE方向で南西側が低い斜面が認められるが,旭断層のリニアメントと大きく斜行すること,地すべり地形に隣接し,その斜面自身が解析された地すべり地形にも見えることから,ここでは変位地形としては扱わない.東旭より南のMa−t12面,沖積面には変位地形は認められないが,旭断層の南方延長で途別川の旧河道がN−S方向に延び,幕別丘陵の北端,国際ゴルフ場の東端付近にN−S走向で西に15m前後の落差を持つ小崖が認められる.この小崖より南方の延長部では変位地形は認められない.

・茂発谷断層

幕別町豊岡付近から幕別町新和にかけて,NNE−SSWの走向で約2kmにわたり分布する.西側が落ちた幅200〜300mの明瞭な撓曲崖として認められる.Ma−t2面に西落ち20〜30mの変位を与えている.

・豊岡東断層

この断層は,活断層研究会(1980;1991)により存在が指摘されているが,東郷(2000b)の示した十勝平野の活断層分布からは抹消されている.本調査による空中写真判読からは,豊岡東断層はMa−t1面の段丘縁辺部が解析された斜面と判断された.

・稲士別断層

この断層は,活断層研究会(1980;1991)により存在が指摘されているが,東郷(2000b)の示した十勝平野の活断層分布からは抹消されている.本調査による空中写真判読でも,稲士別断層の存在を指示する根拠(リニアメント,段丘面の比高の不連続等)は確認できなかった.

・新和断層

幕別町新和から新田牧場の東を抜け,猿別川西方の新田牧場が位置する台地にかけて,NNW−SSE〜NW−SWの走向で約4.5kmにわたり分布する.西側が落ちた幅100〜300mの撓曲崖を成す.このリニアメントは,活断層研究会(1980;1991),東郷(2000b)では茂発谷断層の一部とされていたが,茂発谷断層とは大きく斜行するため,本報告で“新和断層”として再定義する.茂発谷川から新和にかけては,リニアメントは沢地形となっている.リニアメントの両側にはMa−t2面が分布するが,東側の面は西側に比べ15〜20m高くなっている.新和付近では,撓曲崖頂部の東側に比高10m程度の東落ちの小崖が形成されている.これは,新和断層に伴うバックスラストの可能性がある.なお,猿別川西岸のMa−a1面および猿別川東岸では,地形変位は認められない.

・途別川断層

帯広市愛国付近から同市桜木付近を通り,帯広空港付近にかけて約12kmにわたり分布する.オフセットした2条の変位地形が存在する.北のものは帯広市愛国から南愛国にかけてNNE−SSWのものが約4.5km追跡できる.愛国付近ではMa−t8面に東上がりの撓曲ないし傾動が生じている.一方,南側のものは,帯広市古舞から帯広空港付近まで約6kmにわたり追跡される.走向は古舞付近でNNE−SSW,それ以南ではNNW−SSEへ変化し,Ma−t3〜t4面に変位を与えている.帯広市上以平の4号付近から南ではMa−t3面には明瞭な撓曲崖は認められない.帯広空港付近から南ではアカンボ川沿いの5号付近に南西向きの崖が認められるが,この崖はこれより南に連続せず,川崖の可能性もある.更別村勢雄の牧場川,サラベツ川流域の沖積低地では,東郷(2000b)が指摘した島状分布を示すMa−t6面〜Ma−a2面が認められる.しかし,断層変位に伴うような直線的な地形の逆傾斜域は認められず,更別村勢雄付近で台地状に北東−南西に延びるMa−t9面〜Ma−t7面にも地形変位が認められない.これらの島状の地形面は,途別川断層による地形変位を必ずしも示さない可能性があり,今後の検討が必要である.

・以平断層

幕別町栄付近から帯広市以平付近にかけて約4kmにわたり分布する.走向はN−Sであり,以平付近ではMa−t1面に変位を与え,明瞭な西落ちの撓曲崖を成す.撓曲崖の東側には,撓曲崖と走向を同じくし,比高は10〜20m程度の東落ちの小崖が認められる.これは活断層研究会(1980;1991)の明倫東断層に相当し,以平断層のバックスラストとみなせる.なお,以平断層の南方延長である更別村勢雄付近の牧場川,サラベツ川流域では,以平断層に関係すると考えられる地形変位は認められない.幕別町美川の八号付近にはMa−t9面の東側にMa−t8面が分布する箇所があるが,これは美川のMa−t3面に見られる猿別川の旧河道地形の南西延長に位置し,以平断層のリニアメントと大きく斜行する.この地形は猿別川ないしその支流の旧河道地形である可能性が高い.

・上更別断層

この断層は,活断層研究会(1980;1991)により存在が指摘されているが,東郷(2000b)の示した十勝平野の活断層分布からは抹消されている.本調査の空中写真判読では,更別町糠内の南東1km付近から更別村上更別にかけて約10kmにわたり,走向がN−S〜NNE−SSWで西向きの非常に明瞭かつ直線的な崖として認められる.糠内南東1kmから幕別町駒畠東方の十一線付近までは崖地形が明瞭だが,猿別川による川崖の可能性が残る.十一線からさけます収容場にかけては西傾斜の緩慢な斜面,さけます収容場〜更別村の道の駅にかけては(166.0mの水準点付近),Ma−t2面,Ma−t1面に西南西傾斜の斜面が形成されている.斜面下部は比較的急傾斜で,上部ほど傾斜は緩くなる.この斜面は撓曲・傾動,または猿別川による浸食で形成された可能性がある.それ以南では,変位地形の可能性がある崖,斜面は認められない.なお,猿別川付近で上更別断層に接して分布するMa−t9面以新の地形面には,撓曲,傾動など,地形変位を示す証拠は認められない.

・弘和断層

更別村駒畠南方〜弘和にかけて7km追跡できる,NE−SW〜N−S走向の撓曲崖として認められる.十五線〜十八線付近のやや不明瞭な撓曲崖(約2.5km)と,十七線から更別村弘和にかけての明瞭な撓曲崖(約5km)からなる.国道236号線以南のリニアメント延長部に広がるMa−t4〜t6面には,こうした西向き斜面は認められない.

・朝日断層

忠類村朝日〜西当にかけて,NE−SW〜NNE−SSW走向の西向きの撓曲崖として認められる.撓曲崖は長さ約3kmであり,Ma−t4面,Ma−t5面に西落ち変位を与えている.東郷(2000)では弘和断層と朝日断層を一括し,弘和−朝日断層としていたが,朝日断層と弘和断層の間に分布するMa−t4〜6面では,開析が進んでいるものの西落ち変位を示す証拠は認められないことから,弘和断層とは分離して扱うこととする.

・更南断層

更別村更南付近では,Hi−t2面が東に0.9〜1度程度傾く,比較的急な傾斜を示す.しかし,Hi−t2面を切ってNNE−SSW方向に流れるサッチャルベツ川では,東側の谷斜面が西側のそれよりやや高く,東側のHi−t2面は西側のHi−t2面とほぼ同高度を持つ.これを,サッチャルベツ川付近に存在する断層により,東側のHi−t2面が西側のそれに対して上昇したためと解釈し,更南断層のリニアメントとした.リニアメントの総延長は約3kmである.なお,リニアメントの北方延長に広がるMa−t7面,南方延長のMa−t3面には西落ちの地形変位は認められない.

・光地園断層

この断層は,東郷(1983),活断層研究会(1980,1991)により,大樹町光地園から広尾町紋別,広尾町上野塚を経て,広尾町楽古に至る活断層とされる.広尾町開進〜大樹町光地園のペンケタイキ川流域までは広尾断層と光地園断層は一致し,ペンケタイキ川より北では光地園断層は広尾断層より離れて,北に向かうとされている.空中写真判読の結果,光地園断層に伴うと考えられるリニアメントは,広尾町開進から広尾町上野塚に至る,尾根高度の不連続,風隙の連続,および局所的な逆向き小崖として認められる.尾根の不連続は地質断層とされる広尾断層付近で顕著である.風隙の連続は広尾断層上で顕著だが,広尾断層の東側を占める新第三系豊似川層の分布域にも分布する.逆向き低崖は,広尾町開進の紋別川南岸に,広尾断層に沿って短いものが認められる.広尾町紋別,広尾町上野塚に局所的に逆向き低崖が認められるが,これらは長さ100〜300m程度で比高が無くなり,広尾断層を伏在部へ延長した線よりもややずれた箇所に現れている.さらに,上野塚では逆向き低崖のすぐ北側でリニアメントを挟んで分布するHi−t5面に標高差が認められない.広尾町楽古でも,広尾断層の伏在リニアメントからやや東側にNW−SE方向に延びる水路において,水路の東側が西側に比べ1〜2m程度高くなっているように見えるが,このリニアメントも長さ400m程度で消滅する.

なお,活断層研究会(1980;1991),東郷(1983)によりリニアメントが実線で示されている大樹町光地園〜広尾町開進では,開進付近で広尾断層に沿い風隙の連続が顕著だが,パンケタイキ川以北ではリニアメントは認められない.