3−4−2 泉郷地区の活断層(泉郷断層)の評価

泉郷断層については、いずみ学園東方の高位段丘面上で行ったピット調査から2,370〜4,200yBPの最新の断層活動(イベント@)と約16kyBPのもう一つ前の断層活動(イベントA)が確認された。一方、嶮淵川沿いで行ったトレンチ調査では、1,000〜3,820yBPの確実度の低い最新のイベント@と15〜22kyBPのもう一つ前の確実度の低いイベントAおよび21,650〜22,470yBPの確実度の高いイベントBが確認された。前者のピットと後者のトレンチは、泉郷断層として認定されている連続するリニアメント上に約700m離れて位置している。このことから、両者は泉郷断層に関する一連の断層活動を記録しているものと考えられる。この点から、ピットにおける2,370〜4,200yBPの最新活動(イベント@)とトレンチにおける1,000〜3,820yBPの最新活動(イベント@)は、泉郷断層に関する同じ最新活動を示しているものと判断される。

泉郷断層に関するもう一つ前の断層活層については、ピットにおける断層活動(イベントA)が、Yo−1テフラの降下後からEn−aテフラの降下前の間に生じたことが確認されている。ただし、火山カタログによるテフラの年代は、En−a(15〜17yBP)、Yo−1(15〜18yBP)であるが、ピットの観察によると、En−aテフラとYo−1テフラの間に厚さ20cm程度のローム層が挟在することから、ある程度の時間間隙が推定され、ピットでYo−1テフラに対比された火山灰の年代は火山カタログに記載されている年代よりも古い可能性もある。したがって、Yo−1テフラの年代によっては、ピットのイベントAの年代は16kyBPよりも古い可能性もある。一方、泉郷トレンチおけるもう一つ前の断層活動を示すイベントのうち、イベントAについては、前述のように同じトレンチのイベント@を生じた撓曲と同時に形成されたとする解釈も可能であり、必ずしも独立した1つの断層活動として扱う必要はないと考えられる。イベントBの年代については、Va層堆積前の21,650yBPからWa層堆積後の22,470yBPの間に推定されるが、Va層の14C年代(21,650±140yBP)を得た試料は、Va層中に含まれる二次堆積の腐植ブロックであることから、Va層の年代はそれより新しい可能性もある。この場合にはイベントBの年代が22kyBPよりも新しい可能性がある。これらのことから、泉郷地区ピットで確認されたイベントAと泉郷地区トレンチで確認されたイベントBは、いずれも泉郷断層のもう一つ前の断層活動を示しているとする解釈が可能であり、その年代は16〜22yBPの間に推定される。また、さらに1つ前の断層活動が変位量の関係からWe層堆積期(Kt−1テフラ降下直前の41kyBP頃)に推定される(図3−4−2)。

断層の変位量の変化を各イベント時期とともに図3−4−2に示す。泉郷地区トレンチにおいては,断層の変位量からも断層活動がイベント@およびイベントBの時期に推定された。泉郷断層の推定される単位変位量は,泉郷ピットでは0.7m程度であったが,泉郷トレンチではイベント@の時期に1.4〜1.6m程度,イベントBの時期に0.6〜1.0m程度,We層堆積期に0.8〜1.2m程度と推定される。また,断層活動の再来間隔は19kyBP程度と推定され,平均変位速度は0.05〜0.07m/1,000年程度と見積もられた。

以上述べたように、活動間隔は1万9,000年程度と見積もられ、最新活動4,000年前頃と推定され、その判断からは、次の地震活動は1万5,000年後頃ということになり、当面活動の可能性は低いといえるが、馬追断層と連動して活動する場合もあり、馬追断層の活動との関連で、なお注意を要する。