1−6 調査結果の概要

石狩低地東縁断層帯の第2年次の調査として、地形地質調査(地表精査・ピット調査)、ボーリング調査およびトレンチ調査を計画し、2万年前以降の活動の証拠が明らかとなった、その中部南〜南部(泉郷断層・馬追断層)を主な調査対象とした。

地形地質調査は地表精査とピット調査を行った。

地表精査はボーリングおよびトレンチ調査箇所近傍などを対象地域とした。まず長沼地区については、活断層図作成のために北部地域(岩見沢・栗沢)と中部南半部・南部地域(千歳・早来)のつながりを探るための重要地域で、層序と変位を確認するために調査を行った。その結果、西に急傾斜する後期中新世追分層に顕著な斜交不整合関係で重なり、緩く西に傾斜する中位段丘堆積物はほぼ最終間氷期から最終氷期前半の地層であると推定された。千歳市泉郷地区については、既存地質調査資料の再解析を含めて、トレンチ・ピット調査箇所付近の地形地質状況を解明した。その結果、ピット予定箇所は道横断自動車道コムカラ峠の活断層露頭と同様に高位段丘面の分布域にあたり、トレンチ予定箇所は下位上段の段丘面の分布域にあたることが分かった。早来町富岡地区については既存活断層関連露頭の観察にもとづきトレンチ予定箇所付近の地形地質状況を解明した。その結果、トレンチ箇所背後の大露頭には下位よりKt−1(39−42ka)、Spfa−1(31−41ka)、Spfl(31−41ka)、En−a(15−18ka)およびTa−d(8−9ka)など完新世火山灰がローム・腐植などをはさみながら厚さ約10mで累積しており、馬追断層の活動による二次的変位を示す小断層群(Ta−dまでを切る)が検出され、ボーリング・トレンチ調査と合わせての総合解析に、少なくとも4万年前以降の変位過程解明の展望を示した。

ピット調査は岩見沢地区緑が丘と泉郷地区いずみ学園南東で実施した。緑が丘では岩見沢断層のによる変位状況を確かめた。対象地層は花粉分析・14C年代測定から5万年前以降で最終氷期最寒冷期を含むものであることが分かったが、クリオーターベーションを顕著に受け、微妙なものと予想されていた変位の存在は確認できなかった。いずみ学園南東では既存活露頭の掘り下げとして調査を行ない、変位の基準となる火山灰などについて火山灰同定・14C年代測定などを行った。その結果、泉郷断層について最新の活動として4,000年前頃が、さらに一つ前として1万6,000年前頃が検出され、高位段丘面堆積物はS字状に大きく変位している様子が観察された。

 ボーリング調査およびトレンチ調査は泉郷地区嶮淵川沿い箇所および富岡地区フモンケ川沿い町道横の箇所で、組み合わせて行った。嶮淵川沿いの箇所では泉郷断層を対象として、詳細な調査と14C年代測定・火山灰同定などを行った結果、ピット箇所と同様の最新活動(変位量1.4m)および一つ前に対応する活動(同1.2m)が検出された。Kt−1火山灰(約4万年前)の変位量は3.2mである。フモンケ川町道横の箇所では馬追断層を対象として詳細な調査と14C年代測定・火山灰同定などを行った結果、7,000年前〜3,500年前間に2回の活動(1回の変位量2m±)があり、後の活動、すなわち最新の活動の時期は4,000年前頃と推定された。さらに、Kt−1火山灰の変位量は7m+で、8,000年前〜40,000年前の間さらに数回の活動が存在するとの結果になった。

以上の調査結果を総括して、少なくとも泉郷断層と馬追断層の最新活動については、同時で、両断層延長18kmが活動した可能性が高いと推定される。さらに、泉郷断層に限ると、断層の活動間隔は19,000年、平均変位速度は0.05〜0.07m/1,000年と見積もられる。馬追断層については、断層の活動間隔は3,000〜10,000年、平均変位速度は0.11〜0.12m/1,000年と見積もられる。活動間隔についてはかなり幅があり、短かい間隔を適用すると、ほぼ前回からの経過年数を過ぎており、「要注意断層」ということになるが、今後さらに検討を要する。

図1−1 石狩低地東縁断層帯の位置