7−2−4 活動履歴と変位量

[最新活動と活動間隔]

 泉郷断層については、いずみ学園南東ピットの調査により、明瞭な断層が認められ、最新活動は2つの火山灰鍵層(En−a, Ta−c)の降灰の間に発生していることは明らかで、さらに6点の試料の14C年代測定により、それは5,660±60y.BPと5,090±70y.BPの間、すなわち約5.4kaに限定できるという結果になった。これは露頭状況から判断して泉郷断層の最新活動時期を確実にとらえているものとみなされる。一方、フモンケ川沿い箇所のトレンチ調査では同断層の最新活動は大まかにはTa−a(1739年)とEn−a(15〜18ka)の間であるが、 En−aなどの撓曲構造に水平に接するとした砂薄層の上下の14C年代値から1,000±60y.BPと3,820±70y.BPの間に限定できるとしたが、両者の接合関係はインボリューションの影響もあり、かなり不確かであり、ピット・トレンチ両箇所が600mの距離で極めて接近していることを考慮すると別々の活動が発生したとは思えないことから、約5.4kaの値を採用するのが妥当であると判断する。

 一つ前の活動の時期については、トレンチ調査においてはイベント堆積物の直上と断層活動による割れ目の発生を受けた地層の14C年代値21,650±140y.BPと22,470±220Y.BPからほぼ22,000年前に特定できる。一方、ピット調査では火山灰鍵層Yo−1(17ka)と En−a(15〜18ka)の間に推定でき、一応、16ka頃と判断した。これら2つの値には4,000年ほどの開きがあり、その原因が問題となる。これら2つの火山灰の年代が確かであり、これらが同一のイベントを示すとすれば、トレンチの年代測定試料に問題があるかもしれない。何故ならば、21,650±140y.BPを示す試料(Iz−Tr−C6)はインボリューションが顕著な地層中から採取したもので、古いものが巻き込みなどで持ち込まれた可能性があるからである。その意味では、一つ前の活動もピット調査箇所の年代を採用するのが妥当といえる。

 さらに、これらの前の活動については、トレンチ調査において、Kt−1を基準とすると、さらに約4万年前までの間もう1回の活動が予想できる。

 以上のことから、ピット調査の結果にもとづき泉郷断層の活動間隔を算定すると、ほぼ約10,500年になる。

[1回あたりの変位量と平均変位速度]

 1回当たりの変位量(単位変位量)はピット箇所では垂直変位でほぼ0.7m、トレンチ箇所では過去3回の垂直累積変位量が4.5m単位変位量は1.5mになる。平均変位速度はピット箇所では過去16kaの累積変位量は約1.5mであり、O.09m/1,000年、トレンチ箇所ではKt−1の示す過去4万年間の累積変位量が4.5mでO.11m/1,000年という値になり、千年あたり0.1m前後(B・C級の境界付近の活動度)とほぼ値が一致している。

 以上の活動(地震発生)時期と変位量の関係について、図63にまとめた。

 図63 泉郷断層ピット・トレンチ内に見られる断層活動のまとめ