6−3−5 早来町富岡フモンケ川沿い(トレンチ箇所付近)

 ボーリング箇所は馬追丘陵中主部の南部の台地内を流れるフモンケ川沿いの完新世河岸段丘(段丘5面、現河川氾濫原面よりの比高数m)上で、地表調査で馬追断層による撓曲変位を認めた所である(図49写真21)。町道をはさんで、西南西−東北東方向に富岡No.1孔(孔口標高38.78m、掘進長29m)、富岡No.2孔(同33.27m、同31m)、富岡No.4孔(同32.69m、同23m)富岡No.3孔(同32.48m、同29m)を80m間に配置し掘削した。馬追断層リニアメントはこの線とほぼ直交しており、地表調査で確認した撓曲部はNo.2孔からNo4孔付近にかけて存在している。同様に詳細は巻末資料5に示し、以下で断面解析の結果にもとづき説明する(図50)。ただし、馬追断層リニアメントの東側、すなわち、下盤側の方から説明した方が地質・地質構造を理解しやすいため、最も東側に位置するNo.3孔より説明を行う。なお、いずれのボーリング孔でも電気検層および密度検層を実施したが、密度検層を実施したのはボーリング箇所を含む線(町道)に沿って、前年度に極浅層反射法地震探査(S波)を実施しており、その結果との比較検討を行う際の一助とするためである。

  i )No.3孔では上位より、盛土(腐植および泥炭を起源とする耕作土)、腐植質層を頻繁にはさむ細〜中粒砂層( I a層)、泥炭〜泥炭質シルトを主体とする I b層および I c層(Ta−d起源の軽石を少量含む)、Ta−d起源軽石を含み暗緑色頁岩礫を主体とする砂礫層( I d・ I e層)、主にSpfl起源の軽石(径0.2〜1cm)を主体とする軽石質層(III層)、スコリア・軽石質火山灰を主体とし最上部は一部腐植質シルト質細粒砂〜砂礫層の IV a層(軽石は径0.2〜1cmでKt−1に同定)、泥炭・軽石質部互層の IV b層(全体に有色鉱物に富み軽石・有色鉱物の特徴はKt−6を示唆)、頁岩亜角〜亜円礫を主体とする砂礫層( IV c層)、やや固結した暗緑灰色のシルト混じり極細粒砂からなり、下半部は生痕(巣穴)に富む V a層、頁岩の亜角〜亜円礫を主体とする砂礫層( V b層)、それ以深の細〜中粒砂岩を主とし一部砂礫岩をはさみ急傾斜の層理が認められるVI層に区分できる。以上をまとめると、 I a〜e層(深度0.91〜6.56m)は完新世の河川氾濫原堆積物(段丘5堆積物に対比)であることは明白で、IIIおよび IV a〜c層(6.56〜11.7m)はSpfalおよびKt−1をはさむことなどから周辺の地層との対比上、埋没した段丘4堆積物に相当すると考えられる。 V a・b層(11.7〜17.95m)はその岩相的特徴から海水影響下にある地層であることは明白で、周囲には海成面とみなされる段丘2面が広く分布することから、一応、段丘2堆積物とみなした。ただし、編年的な明確な証拠は今のところない。VI層(17.95m以深)は固結度が高く急傾斜層理が示されることから、新第三系であることは明白で、周辺の地質状況から判断して追分層とみなされる。

  ii )No.3孔と同様に撓曲部の東側(下盤側)に位置するNo.4孔の地質・地質構造状況はNo.3孔とほぼ同様である。ただし、III層(Spfl)は欠如している。追分層とみなされるVI層は深度18.26m以深である。

  iii )撓曲部の上盤側に位置するNo.2孔では結論的に言えば゛、No.3・4孔のIII・ IV a〜c層と V a・b層の存在を認めることができなかった。深度0〜2.83m間は耕作などによる盛土および I c〜e層、すなわち完新世河川堆積物(第5段丘堆積物)で、それらの下位、2.83〜31m間は追分層であった。追分層は深度2.83〜11.6m間は塊状の緑灰色細〜粗粒砂岩を主体とし、内部の含礫の配列から70°傾斜の層理を確認できた。11.6m以深は礫〜砂礫岩を主体とし、深度27.28m付近では鏡肌を伴う角礫状の礫が多く、断層の存在が示唆された。

  iv )同じく撓曲部の西側(上盤側)で、全孔の中で最も西側の、段丘2と位置付けた台地の際に位置するNo.1孔では、厚さ25cmの表土に続き、深度0.25〜1.43m間は腐植土(黒ボク) I a層で、Ta−b・cをはさんでいる。その下位の深度1.43〜2.27m間は径0.7〜3cmの褐色軽石からなり、亜角礫状のものよりなり、Ta−dそのもの( I d層)と判断できた。その下位には厚さ10cmほどのEn−a(II層)がわずかに確認できる。深度2.38〜7.3m間は上位より軽石まじり泥炭、Spfl起源の軽石に富む粗粒火山灰〜軽石質相(多数の級化ユニットより構成されるとの記載があるが、このような細かいユニットはSpfl本体にはありえないことから判断するとその二次堆積物とみなされる)、頁岩・軽石円礫を含む砂礫層(基底礫層)で構成されるIII層である。深度7.3〜29m暗灰色の細〜中粒砂岩を主体とし、22〜29m間に含軽石層や炭質薄層がはさまれ傾斜60〜70°の層理を確認できる。近傍の大露頭(h−10地点)の地質状況などを参考にすると、 I a・dおよびII層は台地際の斜面なりにマントル状におおう腐植・火山灰群そのものであることは明白で、III層はSpfl流出により形成された後の削剥・再堆積の堆積物で、No.3・4孔で想定した段丘4堆積物にほぼ対比できる。ただし、付図(活断層図)では周囲のフモンケ川沿いでは段丘4堆積物の存在は明示しておらず、段丘2とした周囲の台地も含めて、その存在の是非は今後の検討課題となる。

  v )フモンケ川沿い箇所では前年度の極浅層反射法(S波)地震探査では深度20〜30mに明瞭な反射面を認め、それが新第三系と第四系の境界面ではないかと考えていた(6.2.4参照)。しかし、ボーリング調査では馬追断層リニアメント(段丘5面撓曲部)西(上盤)側ではその境界面は深度7m以内と、予想に反して極めて浅くとらえる結果となった。

  vi )ボーリング柱状図を対比した断面図全体では急傾斜する追分層(関連する地質・地質構造情報から西傾斜とみなす)の上位にほぼ水平で重なる第四系の斜交不整合関係が明瞭である。No.4孔とNo.2孔の間では、上記の境界面には約16mの東落ち変位が生じている。ただし、この境界面については、その上位の第四系は上盤(西)側では段丘5堆積物であるのに対して下盤(東)側では段丘2堆積物(?)とより古いことに留意する必要がある。両側に分布し、変位を正確に把握できるのは段丘5堆積物( I 層)であり、その下限での垂直変位量は約4mである。

 No.3孔の深度4.45〜4.57m間のTa−cの下位の腐植質シルトを試料(Tm−B−C14)として採取し、14C年代を測定した結果、7、010±90y.BPの値を得た。

 図49 早来町富岡フモンケ川沿いボーリング調査孔(富岡1〜4)・トレンチ箇所の位置図

 図50 早来町富岡フモンケ川沿いのボーリング調査断面と試料採取位置など