6−3−4 千歳市泉郷嶮淵川沿い(トレンチ箇所付近)

 ボーリング箇所は馬追丘陵中主部ブロックの北端部の台地(段丘4面)の際で嶮淵川沿いの小枝沢低地(現河川氾濫原面)への移行部である。南西−北東方向の線上に南西から泉郷No.1孔(孔口標高18.79m、掘進長11m)、泉郷No.3孔(同14.54m、同10m)、泉郷No.4孔(同11.96m、同12m)、泉郷No.2孔(同11.82m、同13m)を60m間に配置し掘削した(図47)。泉郷断層リニアメントはこの線とはやや斜交しているが、地表調査で確認した同リニアメントにあたる地形面(段丘4面)の撓曲帯はNo.1孔付近からNo.4孔付近にかけての部分を通過する。同様に詳細は巻末の資料5に示し、以下で断面解析の結果にもとづき説明する(図48)。なお、各孔の岩相と対比上の一つの判断材料として、全孔について電気検層を実施した。

  i )リニアメント撓曲部の高所に位置するNo.1孔のボーリング結果に従えば、上位より耕作土および腐植土(黒ボク)にTa−a・bをともなう I 層、En−a(II層)、Spfl起源軽石を豊富に含み火山砂・火山灰質シルトの互層よりなるIIIa層、頁岩円礫を多く含む砂礫の IV d層、腐植質シルトと含軽石(Kt−1に同定)の IV e層、含頁岩円礫の中〜粗粒砂の V g層、および淘汰良好な細粒砂岩でシルト岩薄層をはさむVI層に区分できる。このうち、IIIa〜 V g層は水成(湿地成)の堆積物とみなされる。深度8.11m以深のVI層はシルト岩薄層が傾斜45〜60°の傾斜を示すこと、上位の層と比較して固結度が高いことおよび岩相から判断して追分層に対比できる。

  ii )No.1孔の隣のリニアメント撓曲の傾斜部でのNo.3ボーリングの地質構成はNo.1とほぼ同様であるが、耕作などの人為的改変により、 I ・II層を欠如し、0.16〜3.09m間のIIIa・ IV a層中にはSpfl起源の軽石を多く含んでいる。さらに、深度3.80〜3.91m間に腐植質シルトがはさまれるが、その上下境界は傾斜50度で明瞭に境されており、この付近に断層の存在が示唆される。

  iii )No.4孔はリニアメント撓曲部に近接する低地で掘削したものであり、地表部の深度0〜0.42m間は耕作土・埋め戻し土である。その下位にTa−aをはさむ泥炭層が存在するのが、撓曲部との違いの第一であり、さらに、II層(En−a)の下位のIII層の下半部は生木様の木片・Spfl起源の軽石を含む泥炭質相(IIIc層)より構成されるのが、No.1・3孔との違いの第二である。さらに、8.93〜12m間は比較的締まった岩質であることから、当初は追分層ではないかと考えたが、主として褐灰色の粘土〜シルト・細〜中粒砂・砂礫の互層で泥炭薄層をともない、ほぼ水平な層理が認められることから、更新統堆積物( V 層)と判断した。その詳細な時代については、特に検討を行わなかったが、内湾(ラグーン)周辺の湿地堆積物のように見受けられることから、近傍の台地(特に嶮淵川北側)の地質を参考にして、現時点では最新の海成面である段丘3面の構成堆積物(T3)と判断する。

  iv )No.3孔はNo.4孔と比較するとリニアメント撓曲部からさらに東に離れた位置(低地)で掘削したものである。その地質構成はNo.4とほとんど類似しており、深度8.7〜13m間には同様に V 層がほぼ水平な層理を有して存在する。

  vi )周囲の地形・地質状況を勘案しながら、全孔を合わせて総合的に地質および地質構造を判断すると、II〜 IV 層以上の地層は撓曲を示す段丘4面の構成堆積物(T4)であり、低地側の I 層は現河川氾濫原堆積物の一部であるとみなされる。特にNo.3孔No.4孔の間でII〜 IV 層は全体として2〜5m±で東側に急激に落ち込んでいるのが明瞭であり、ボーリング調査の結果からはこれらの孔の間に泉郷断層が存在すると予想できる。

 No.4孔の深度3.9〜4m間の腐植質泥を試料として採取し、14C年代を測定した結果、20、050±110y.BPの値を得たが、これはボーリング孔内に現れた火山灰(Kt−1、Spfl起源の軽石で二次堆積物)との関係および後で行ったトレンチ調査の地層構成との関係において妥当である。

 図47 千歳市泉郷嶮淵川沿いのボーリング調査孔(泉郷No.1〜4)・トレンチ箇所の位置図

 図48 千歳市泉郷嶮淵川沿いのボーリング調査断面と試料採取位置など