5−3−3 自衛隊東千歳駐屯地・富岡(馬追断層)

 駐屯地北部東西横断道路沿い(c−42地点):位置的には馬追断層リニアメント部(東落ち逆向き低崖)から西側隆起部に該当する、長さ50mほどのリニアメント横断方向の露頭である。段丘1堆積物(T1)が分布し西寄りの部分は5〜10°程度の西南西〜西南方向の傾斜を示すが、東端部は東北東方向にやや傾斜し、ほぼ層理と同走向のすべり面が存在している。この地すべり現象にはKt−1およびSpfa1を含むローム部も巻き込まれ、それらの上位を蓋をするようにEn−a以降の火山灰類が覆うことから、En−a降灰以前の地すべりで、馬追断層の活動に関連したものの可能性がある。

 駐屯地遠浅川道路沿い(c−44地点):ここは段丘2面(t2)の逆向き低崖にあたるところで、道路北側の法面を東西方向に長さ20m程度新鮮面を露出させて観察した(写真16図28)。ここでは厚さ約5mの間に下位よりSpfl(最上部)、その二次堆積物(軽石・火山ガラス質砂〜砂礫)、ローム、En−a、軽石まじりローム、Ta−c・Ta−aをはさむ腐植層の重なりがあり、東傾斜東落ちの階段状の正断層群(走向は南北方向が卓越、30〜80°傾斜、累計の落差3.5m)が存在している。この正断層群はEn−aの基底では変位は明瞭である。Ta−dが法面上部に地溝状の窪地に偏在している。腐植層はこれらの正断層群・地溝状窪地をマントル状にスムーズに覆うことから、Ta−d降下(8〜9ka)から腐植層中のTa−c降下(2.5〜3ka)以前にこのような変位をもたらしたイベントが推察される。この露頭はその存在場所から判断して、このイベントはc−27・c−42と同様な断層活動(地震)により生じた変位部の地すべりを示すものと考えられ、地震イベントそのものを間接的に把握する材料となっている。

 JR石勝線南側(h−6地点):リニアメント部にあたる逆向き低崖の肩付近からやや西(隆起側)へ約20mの長さの東北東−西南西方向の断面露頭(農地拡張にともなう)である(写真9図29)。ここでは厚さ10.5mの中に下位よりクッタラ・支笏古期テフラ群(Ssfa、Kt−3など)、Kt−1、Spfa1、En−a、耕作かく乱腐植土とこれらの間のローム群が重なっている。そして、下位より少なくともEn−aまでを切る西傾斜西落ちの階段状正断層群(走向は南北〜北北西−南南東、55〜90°傾斜、累計の落差1.3m)が存在している。一部には地割れを示すと思われる幅15cm±の断層群にやや斜交する軽石質砂礫脈も認められる。このような変位現象はその部位が肩付近の隆起部にあたることから、断層活動にともない背斜状の膨らみが形成されて生じたものと判断される。

 フモンケ川沿いトレンチ箇所北側(h−10地点):火山灰土採取・農地造成により作られた長さ約200mのほぼ東西方向の露頭の一部で、調査2年次目の春に出現した(写真17)。新たに出現した露頭部は幅約50mの馬追断層逆き低崖部分とその西側の肩部(幅50m+)で、南側の町道路面からトップまでの比高は約18mである。下位よりKt−1、Spfa1、Spf1、Spfl二次堆積物、En−a、ローム、Ta−d、腐植層(Ta−c、b、aをはさむ)が重なっている。逆向き低崖部分では、Spfl本体を削剥して水平に堆積したとみなされるSpfl二次堆積物(平行葉理顕著)が15〜20°傾斜で北東〜東北東方向へ傾き撓曲構造を形成し、下位よりTa−dまでを切る、走向N−S〜N45°Wで90°前後の西落ち卓越の正断層群(個々の断層の落差は30cm以内、馬追断層とは一般にやや斜交)が認められる(図30)。このような変位現象は断層活動にともない東下がりの撓曲構造が被覆層に形成され、それにともなって生じた地割れの発生を示すものと考えられ、石勝線南側のものに類似している。

 フモンケ川沿いトレンチ箇所南側(h−11・12地点):火山灰土採取・農地造成により調査2年目に出現した断層に平行〜斜交する、長さ約400mの露頭である。斜交部(高さ3m弱)はほぼ逆向き低崖部に一致し、そこではSpfl二次堆積物、含軽石ローム、En−a、ロームTa−d、腐植層(Ta−c、b、aをはさむ)が見かけ上ほぼ水平に重なり、下位よりTa−−dまでを切る、走向N40°±Wで傾斜が40〜90°SWおよびNE両方向で、両方向落ちが半々の断層群(個々の断層の落差は70cm以内、馬追断層とはやや斜交)が認められる(図31写真18)。このような変位現象はトレンチ箇所北側露頭に類似しており、同様な成因が考えられる。なお、山岸(1986)はこの大露頭の南側(h−13地点)で、この逆向き低崖を北西−南東方向に切る高さ10mあまりの露頭を観察し、トレンチ箇所北側および南側と同様な撓曲構造と断層群を認めているが、その断層の一部(N60°W方向の高角逆断層)は露頭底面まで続くことから、活断層そのものの現れの一部ととらえ、Ta−c直下の腐植は切られるが、Ta−bは切られていないことから、最新活動は5、190y.B.P.〜1、640y.B.P.としている。