いずみ学園南東の活断層露頭が調査2年次目に農地整備の切り土により出現したが、その露頭はピット調査により掘り下げ観察を行ったので、ピット・トレンチ調査の項で説明する。
いずみ学園東側(c−27地点):リニアメント部(地表ではt2面の東落ち逆向き低崖として確認)に存在した小露頭を人力により幅5m×深さ5m程度に拡張することにより観察できた(廣瀬ほか、2000)。ここでは厚さ約5mの中に下位よりSpfl(二次堆積物?、一部)、Kt−1、Spfa1、Spfa1二次堆積物、ローム、En−a、軽石まじりローム、Ta−aをはさむ腐植層が重なっており、このうち明らかにEn−aを切り、Ta−a下位の腐植層(その基底部の14C年代は4、710y.B.P.、巻末資料7)に覆われる断層が認められる(図26)。この断層は走向・傾斜がN46°W60°SEの東落ちの正断層であり、次のコムカラ峠の露頭などとの比較および類似の断層露頭が他にも存在することなどから判断すると、断層(泉郷断層)本体ではなく、断層活動(地震)により生じた変位部の地震後の地すべりのすべり面を示していると判断した。よって、この露頭からは少なくともEn−a降灰時(15,000〜18,000年前)から4、700年前の最新活動の存在を把握できる。
コムカラ峠林道陸橋付近(c−39地点):北海道横断自動車道の建設に際してコムカラ峠部分で最大幅100m・深さ最大約40mで長さ約1kmの逆台形の横断面の大トレンチが掘削された際に林道陸橋部の西側で出現したものである。工事は1995年頃より3年あまりを費やして進められたが、当初の表層部に近い部分については、日下ほか(1996)により観察・報告されている。それによれば、表層部には段丘1堆積物(鮮新統清真布層とされているがそれは明らかな誤り)が存在し、その上位を占めるEn−aとその上位のロームを約1.5mの傾斜移動量で切る東落ちの逆断層が検出された(写真13)。その後、工事は階段状に深さを増し、30m程の深さに達した段階の様子については岡(1998)が報告している(写真14、図27)。すなわち、西に顕著に35°±の傾斜で傾く追分層とそれをほぼ水平〜緩い西傾斜でおおう第四系(東千歳層としたが現時点では段丘1堆積物)の間は明らかな斜交不整合関係であり、この不整合面は上記の逆断層により約20mの垂直変位量で切られ、同断層は追分層の層理にほぼ平行な層面すべり断層であり、N27°W30°SWの走向・傾斜を有する。この断層の位置は空中写真判読で確認できるリニアメントに完全に一致することから、泉郷断層そのものであることが明白であるが、上記の結果から泉郷断層の最新活動期はEn−aの年代(15〜18ka)から判断して、15,000年前頃以降と判断され、平均変位速度は段丘1堆積物底面の変位量20mを段丘1面の形成時期を35万年前として算定すると、0.057m/1,000年でC級の中位となる。
図26 いずみ学園東側の活断層関連露頭スケッチ(地震発生後に変位部に生じた地すべりにともなう正断層;廣瀬ほか、2000原図・加筆修正)
写真13 En−aと上位のローム層を切る泉郷断層(道横断自動車道コムカラ峠林道陸橋北西側)
写真14 段丘1堆積物を落差20mで切る泉郷断層(コムカラ峠陸橋付近で南側を見る、東落ち逆断層)
写真15 新第三系追分層の構造に従う層面すべり断層(コムカラ峠陸橋付近の北側を見る)。右上は断層部の拡大写真
図27 道横断自動車道コムカラ峠大トレンチ陸橋付近の見取り・スケッチ図(岡、1998原図)