5−3−1 栗沢(栗沢断層)

 幌向川沿い(k−1地点):活断層研究会編(1991)で、「ひきずりをともなう逆断層(2mの西上がりの垂直変位)で、断層面はあまり明瞭でなく、断層粘土・剪断帯をほとんどともなわない」として紹介されているが、詳しい報告はその後行われていない。現在、この部分は露頭が崩れ植生に覆われて観察できないが、それよりやや東側の露出部の柱状図は図7のk−1に示した。この柱状図を参考にして判断すると、おそらく、Spfa1起源の軽石を含むTCm(4万年前後)が変位に巻き込まれていると推察される。

 栗沢工業団地東側(k−4地点):小峰・八幡(1999)が「変形構造(泥炭質粘土層が幅約4mで東方へ約80°の撓曲構造)を示す」として記載した露頭である。本調査時点でもその露頭は引き続き維持されており(写真10)、ここでは砂礫層(T3s)を覆って有機質粘土・泥炭・灰色粘土層(TCm)が分布する。断層は確認できないが、明瞭な東下がりの撓曲変形が認められ、泥炭層の垂直変位量は約3.5mであり、泥炭中の材の14C(AMS)年代は44、980±2、940y.B.P.(小峰・八幡、1999)である。したがって、平均変位速度は約3.5m/45,000年=0.07m/1,000年でC級上位となる。

 加茂川2号線砂利採取場(k−20地点):追分層を斜交不整合関係で覆ってシルト・礫層(T2c)および砂層(T2s)が分布する。T2層基底は西傾斜の逆断層により約5.5m変位している(写真12)。断層はT2層で分岐し緩傾斜となっている。断層面の走向・傾斜はほぼ下位の追分層の層理の構造に一致しており、この断層(泉郷断層)は層面すべり断層と考えられる。土砂採取のため最新活動期や複数の活動イベントを示す現象は見られなかった。

 写真11 栗沢断層による段丘3面堆積物TCの変形(k−4地点)

 写真12 段丘2堆積物を切る栗沢断層(逆断層、k−20地点)