5−2−3 千歳市泉郷(泉郷断層)

 リニアメント(泉郷断層)をほぼ西南西−東北東に横断するように、以下の7断面図を作成し、地形解析を行った(図2122)。解析の元になった地形図は国土地理院の1/5,000国土基本図XII−OCの09および19である。

 泉郷1断面:嶮淵川北方の台地を主体とした長沼町と千歳市の境界に沿う長さ1.6kmの断面図である。主に段丘3面(t3)より構成され、リニアメント部で約3m東落ちの逆向き低崖に相当する。t3は全体として47/1,000程度の勾配で西へ顕著に傾動する。なお、断面線の南側に沿って極浅層反射法地震探査(泉郷測線)を実施した。

 泉郷2断面(簡易測量実施):1断面と同様に嶮淵川北方の台地を主体とした長さ1.2kmの断面である。主にt3面より構成され、リニアメント部で約5m東落ちの逆向き低崖に相当する。t3はリニアメント部の西側では21/1,000程度の勾配で西へ傾動する。断面線付近では逆向き低崖部を横断する方向で簡易測量を実施した(図21)。活断層研究会編(1991)で写真により紹介の泉郷断層断層崖はこの断面線付近が該当する。本断面と1断面の東寄りの部分に存在する周囲より25m±突き上げたような地形は地質的には新第三系滝の上層の火山岩相より構成され、浸食条件のちがいを反映した一種の組織地形である。ただし、その西縁には地質断層である主スラスト(南長沼断層)が存在する。

 泉郷3断面(簡易測量実施):嶮淵川の南側に沿う長さ1.75kmの断面である。断面内には段丘3〜5面(t1〜5)および沖積面(a)が存在し、これらのうち、t4・t5は嶮淵川沿いの河岸段丘面である。リニアメント部は断面東端のt4部分にあり、約7mの東落ち逆向き低崖に相当する。その逆向き低崖部について断面線付近で実際に簡易測量を実施して解析した結果は図21に示した。なお、本断面から南の断面はいずれも馬追丘陵中主部ブロック(嶮淵川以西)を横断するものである。

 泉郷4断面:3断面の南350mでそれに平行する断面で、長さは2kmである。本断面には地形面として段丘2〜4面(t2〜4)および沖積面(a)が分布する。リニアメント部は断面東部のt2部分にあり、東落ち約9mの逆向き低崖に相当する。t2はその西側では60/1,000の勾配で西へ顕著に傾動している。断面中部付近ではt3が北へ開いた沢をはさんで分布するが、沢の西側部分を中軸とした活褶曲(背斜)で変位しているように見える。西部の台地西縁にはt4が分布し、40/1,000とかなり大きな勾配で西へ傾動する。

 泉郷5断面:4断面の南400mでそれに平行する断面で、長さは2kmである。本断面の地形面の分布は4断面とほぼ同様である。リニアメント部は断面東部のt2部分にあり、東落ち約9mの逆向き低崖に相当する。t3については、4と同様に北に開いた沢の西側を中軸とした活褶曲(背斜)で変位しているように見える。西部のt4面は37/1,000の勾配で西へ傾動する。

 泉郷6断面:5断面の南600m±でそれにほぼ平行する断面で、長さは2.7kmである。本断面には地形面として段丘1〜4面(t1〜4)および沖積面(a)が分布する。リニアメント部は断面東部の尾根の東側斜面に該当するが、そこは尾根部分も含めて新第三系追分層の地表分布域となっている。尾根部の両側にt1面が東側は緩い西傾斜・西側は顕著な西傾斜(155/1,000)で分布するが、尾根部の間にt1面の仮想変位断面を描くと、少なくとも20mの東落ちの変位を見積もることができる。尾根部西側のt2は24/1,000程度の勾配で西へ傾動する。さらに、t3もほぼ同程度の勾配(26/1,000)で西へ傾動する。

 泉郷7断面:6断面の南600mでそれにほぼ平行する断面で、長さは3.17kmである。本断面の地形面の分布は6断面とほぼ同様である。リニアメント部も同様に尾根の東側斜面に該当し、尾根部の追分層分布域をはさんで、t1の仮想変位断面を描くと、少なくとも30mの東落ちの変位を見積もることができる。なお、同様にt2の仮想変位断面を描くと、少なくとも15mの東落ちの変位を見積もることができる。尾根部の西側のt2・t3面は6断面と同様に西へ傾動する。さらにt4面も25/1,000程度の勾配で西へ傾動する。

 泉郷8断面:中央の八幡神社付近から南西−北東に近い方向で嶮淵川沿いの谷に達する長さ3.5kmの断面である。本断面には地形面として段丘1〜4(t1〜4)および沖積面(a)が分布する。リニアメント部は断面東部のt1分布域にあり、東落ち約20mの逆向き低崖に相当する。西部で広く分布するt3面については、見かけ上南西方向へ33/1,000程度の勾配で傾動が、さらに、t4面についても同様な方向への傾動が認められる。

 泉郷9断面:8断面の南東650mでそれにほぼ平行する断面で、コムカラ峠を通過し、長さ3.3kmの断面である。本断面には地形面として段丘1〜3面が分布し、リニアメント部は断面東部のt1分布域にあり、東落ち約15mあまりの逆向き低崖に相当する。断面西部に広く分布するt3面は40/1,000程度の勾配で見かけ上南西方向へ傾動する。

 写真8 千歳市泉郷北部の泉郷断層リニアメント部(c−2地点、南か0ら撮影)。露頭はEn−aなど。

 図21  泉郷地域の地形断面図その1(泉郷1〜4)。右欄に簡易測量結果2測線分を示す。

 図22 泉郷地域の地形断面図その2(泉郷5〜9)