4−9 段丘2堆積物(T2)

 岩見沢−栗沢丘陵では、本堆積物は従来、「茂世丑層」の一部として取り扱われてきた(松野ほか、1964;佐々ほか、1964;小峰・八幡、1999)。岩見沢丘陵では露頭がほとんどないことから、その詳細は不明であるが、栗沢丘陵ではその南部(加茂川・栗丘砂利採取場付近)で良好な露頭(k−18〜20地点)があり、層序などの詳細が次のように解明できた。新第三系をほぼ平坦な不整合面をもって覆う砂礫・砂層(T2s)とその下位に谷埋め状に分布する砂質シルト・砂礫層(T2c)からなる(図7写真2)。T2sは層厚3〜12m、淘汰良好な細〜中粒砂を主体とし、小〜中規模のトラフ型斜交葉理や平行葉理が発達する。しばしばサンドパイプが認められることから浅海成堆積物とみなされる。T2cは層厚が確認される限りで最大5〜6mで、有機質な暗青灰色の砂質シルトを主体とし、トラフ状の礫層をはさむ.しばしば植物片やクルミ球果を含み、花粉群集は冷温帯的で相対的な温暖期を示す(k−21地点;図8;巻末資料8)。露頭調査結果や既存ボーリング資料によれば、T2sの最高分布高度は60m±である(図7)。T2sは礫層をはさむ灰色粘土層TC(層厚4m)に覆われる。

 馬追丘陵北部および同中部の一部(北ブロック・中北ブロック)では馬追山背斜の中軸部を取り巻くように比較的広く分布し、「茂世丑層」、「角田層」または崖錐堆積物のそれぞれ一部として取り扱われてきた(佐々ほか、1964;松野・秦、1960;松下、1971)。長沼市街東方の砂利採取場付近のn−2およびn−8〜10地点では段丘2面の堆積物として最大厚さ8mの堆積物が確認できるが最下部に厚さ1〜2mの淘汰の良い硬質泥岩・硬質砂岩・チャートなど先新第三系岩の砂礫〜礫層(最大径10cm前後)ともなう他は栗沢丘陵のTC層類似の層相である。すなわち、白灰色〜灰褐色の火山灰質粘土〜砂質シルト(ときに褐色のローム状を呈する)を主体とし、新第三系硬質頁岩などの径5cm大以下の亜角〜亜円礫にとむ砂礫をはさんでいる。南長沼十七区付近の小沢のn−22〜24およびn−26地点付近では活断層露頭の5.3.4で説明するように(図32)、下位より青灰色砂泥細互層(厚さ0.5m+)、海浜成砂礫(厚さ10〜15m前後、礫は最大径15cm大で10cm大以下主体、先新第三系岩主体の円礫・扁平なものも多し、基質はクリーンな中〜極粗粒砂)、白褐色粘土〜砂質シルト(ときに含硬質頁岩などの亜角礫含)の層序が認められる。南長沼の幌内付近および東千歳のn−31、n−35〜39地点、c−6地点およびc−15〜20地点では栗沢丘陵のTCにほぼ相当するものが観察できるが、ところにより礫層が大半を占めたり、下部に砂泥細互層(板状泥)が発達する場合もある(巻末資料1)。泉郷ピット箇所(いずみ学園南東)は7.2.2で説明するように、層厚は5〜10mで、海成(ラグーン成)の砂層に続いて河川成の砂礫(網状河川)の堆積が特徴的である。

 馬追丘陵中部(中主部ブロック)および同南部では、一般的には本堆積物が分布するとしたt2面は新期の火山噴出物に厚く覆われており、その詳細は地表調査では不明である。富岡トレンチ箇所(フモンケ川沿い)付近でのボーリング調査では6.3.5で説明するように、厚さ1〜2mの基底礫層の上に厚さ5m±のラグーン成とみなされる泥砂細互層の存在が認められる(図49、巻末資料5)。

 t2面はt3面の1つ前のステージの海成面であり、本堆積物は酸素同位体ステージ7(約20万年前)の堆積物とみなされ、馬追丘陵南端部の早来層(馬追団体研究会、1983;1987)に対比される。

 図8 栗沢丘陵の段丘2および3堆積物(T2・T3)の花粉分析結果(アースサイエンス社実施)

 図9 長沼市街東方砂利採取場付近の段丘2および3堆積物(T2・T3)の露頭柱状図