4−16−2 北海道横断自動車道断面

 千歳市東部の北海道横断自動車道路に沿っては精度の高い多数の地質調査・地盤ボーリングが行われたが(岡、1998;巻末資料2)、それらの柱状図を並べて、断面解析を行うと図15のようで、以下のように要約できる。

  i )支笏火山噴出物(Spfa1、Spfl)とその下位の本郷層相当層が明瞭な鍵層として追跡できる。

  ii )これらの鍵層を対比基準として、上位より沖積層(層厚5〜15mで火山灰質砂〜砂礫・泥・泥炭より構成され、N値は10±以下で泥・泥炭では3以下)、恵庭・樽前火山噴出物とローム層(ボーリング地点OT−c−74〜76付近およびOT−c−86付近以東の台地で分布、樽前火山噴出物は低地下の沖積層ではさまれることがある)、Spfl(層厚10m±でN値は10〜40±)、Spfa 1(層厚2〜3mでN値は5〜10±)、本郷層相当層(層厚10m±で3〜5枚の厚い泥炭層をはさみ、N値は10〜30±、スコリアを含む火山灰・火山灰質砂層を頻繁にはさむ)、厚真層相当層(層厚は10〜15mでシルト〜細砂および砂・泥の細互層、基底部に砂礫をともなう、N値は10〜30±)などの層序が確認できる。OT−c−73は深度120mまでのオールコアリングのボーリングであり、本断面の標準になるものである。その柱状図によれば、本郷層相当層の下位に10〜20m前後の厚さの半陸成から海成のサイクルが3〜4層ほど認められ、これらは中期更新世の地層群と予想されるが、詳しい検討は今後の課題である。

  iii )OT−c−74〜76付近の台地では、本郷層および上位のSpfa1・Spflは東側台地での厚さ(沖積層による削剥の影響がない)を考慮すると緩く盛り上がり活褶曲を形成しているとみなされる。この台地の西側では沖積層が厚くなり、10m±から最大19mに達しており、石狩低地帯内陸としては注目される。この地域は旧長都沼の南への延長部にあたり(図16)、完新世になってから沈降が発生した可能性が高い。この台地の東側にも東側台地との間に小沈降帯が形成され、沖積層の厚さは8m程度であるが、その上半部は泥炭により占められている。この部分は旧馬追沼の南への延長部にあたり(図16)、同様に完新世になってから沈降が発生したもの思われる。

  iv )東側台地で本郷層相当層が確実に追跡可能な部分はOT−c−84〜103の部分である。この間850m間では本郷層に30mの垂直変位(37.5/1,000)が生じており、やや撓曲的となっている。OT−c−103付近より東側ではいくつかボーリングが行われている(OT−c−104〜106)。これらのボーリング箇所からやや東側一帯は地形面区分上は段丘3面の範囲であるが、ボーリングが少ないことと、恵庭・樽前火山噴出物およびロームなどに厚く覆われることから、構造の詳細は不明である。コムカラ峠付近は段丘1面の範囲であるが、ボーリングOT−c−107からOT−c−110の間では、その構成堆積物(T1)の基底、すなわち下位の新第三系追分層との斜交不整合面に明らかに20m程度の東落ち変位が生じている。この変位は泉郷断層そのものの現れであり、5.3.2で述べるように峠付近での大トレンチ工事によってより詳しい実態が明らかにされた。

  v )本断面図において本郷層相当層(5〜10万年前前後)の示す全体としての垂直変位量は55m程度であり、その値は長沼断面と一致している。

 図14 長沼市街付近の東西方向の地質断面図(長沼断面)

 図15 長都東方〜コムカラ峠間の東西方向の地質断面図(北海道横断自動車道断面)

 図16 古地図に見る長都沼と馬追沼(1910年発行「漁」の一部)。横断自動車道の位置を黒太実線で示す。