4−16−1 長沼断面(長沼市街付近)

 長沼市街付近に関しては深度50m付近までの地質調査ボーリングの地点が多数存在している(北海道農業土木協会編、1990;そのほか長沼町役場関係)。さらに、市街東方では大規模な山砂利採取場があり、大きな露頭があちこちに存在し、採掘に関連して調査ボーリングも行われた(近藤ほか、1987)。これらのボーリングの柱状図および露頭柱状図(図9)のうち直線的に並ぶものを付図に示すようにつないで地質断面図を描き(図14)、解析を行った。その要約結果は以下のとおりである。

  i )支笏火山噴出物(Spfa 1、Spfl)以前の陸成層(層厚20m±)が鍵層として広く追跡できる。これは馬追丘陵西縁台地沿いに南へも追跡でき、山田(1983)などにより、馬追丘陵南部の本郷層に確実に対比できる。

  ii )この鍵層(本郷層相当層)を対比基準にして、上位より、沖積層(層厚7〜20m、N値は5±以下)、支笏火山噴出物起源の軽石含の火山灰質泥・砂層(同5m+)、本郷層相当層(低地下では3枚の厚さ3m±の泥炭層が広範囲に追跡可能)、厚真層相当層(層厚30m+、低地下ではN値10±以下の泥〜細粒砂相を主体とし下部では泥炭がはさまれることがある)、新第三系(市街東方台地でその存在が認められ、追分層・南長沼層が存在する)の層序が認められる。東方台地では、新第三系と厚真層相当層以上の地層は明確な斜交不整合関係を取り、不整合より上位の地層群・堆積物は段丘3堆積物(T3)を構成している。

  iii )砂利採取場東側の露頭の調査では、3.3および4.9で述べたように、さらに高位の段丘面(段丘2)が識別され、厚さ10m程度の堆積物が確認できる。下部は淘汰の良好な砂礫より構成され、早来層に相当する。

  iv )厚真層相当層以上の地層は台地および低地中〜東部で全体として西へ傾動し、低地西部ではほぼ水平となっており、特に局部的に撓曲を示す所は存在しない。傾動の示す垂直変位は、本郷層相当層(5〜10万年前前後)で水平距離3、700mに対して55m(14.9/1,000)、段丘2堆積物の基底で水平距離800mで30m(37.5/1,000)であり、変位の累積性が認められる。