2−2 断層帯の概要

 石狩低地東縁断層帯は北海道中央部の岩見沢市の岩見沢市街から栗沢町中央部、長沼町東部、千歳市東部を経て早来町早来市街南西部に至る全長約55kmの活断層帯である。ここでは本断層帯を北から、岩見沢断層、栗沢断層、栗沢断層、長沼傾動帯、泉郷断層、馬追断層、嶮淵断層およびそれらにともなう副次的な断層・撓曲と定義する(図1)。構成する断層などの概要は以下のとおりである。

 岩見沢断層:北北東−南南西の走向でほぼ6kmの延長である。岩見沢市街の北部、労災病院付近から、日の出町の西部、岩見沢自動車学校の東側をとおり、北海道教育大学岩見沢校付近、緑が丘墓地南側まで連続し、東側が落ちた逆向き低崖を示す。岩見沢断層の北部の400m前後東側には延長約2.5kmの逆向き低崖で示される岩見沢東断層が存在し、岩見沢断層の西側には幅最大500m・高低差10〜25mの緩い西傾斜の傾動帯が存在する。

 栗沢断層:南北〜北北東−南南西の走向で6.5kmあまりの延長である。栗沢町由良の栗沢工業団地東側から、道立福祉村西側をとおりエムズゴルフ場付近まで続き、栗丘付近で不明瞭になり、東側が落ちた逆向き低崖を示す。本断層の西側にはほぼ国道234号沿いに幅500m・高低差20m前後の西傾斜の傾動帯が存在する。

 長沼傾動帯:地質断層である長沼断層の西側台地の幅1.5〜2kmは西側傾斜の緩い傾動帯となつており、北長沼市街南方から南長沼国道274号付近まで10kmあまりの長さがある。長沼市街付近の地質断面解析によれば、幅はさらに広がり4kmあまりで、先支笏火山噴出物の湿地堆積物を基準にすると垂直変位量は80m前後になる。

 泉郷断層:北北西−南南東〜北西−南東の走向で9.5kmの延長である。長沼町南端の雪印乳業研究所農場付近から千歳市泉郷の信田温泉、いずみ学園東方、道東自動車道コムカラ峠付近をとおり陸上自衛隊東駐屯地内まで続き、東側が落ちた逆向き低崖を示す。本断層の東側には馬追丘陵中部南の主スラストとみなされる西落ち東上がりの南長沼断層(第四紀断層)が0.3〜1.3km間隔でほぼ平行して走り、両者の間は構造谷(嶮淵川−シーケヌフチ川構造谷)となっている(岡、1998)。南長沼断層は南五号の南長沼用水付近の地下では伏在断層となっている(佃ほか、1993)。泉郷断層の北方に続く延長3kmほどの部分は南長沼断層の前縁部で台地面(幅800m前後)が西へ高低差15mあまりで傾斜する。泉郷断層の西側は広く傾動帯となっているが、道横断自動車道沿いでの地質断面解析によれば、国道337号の東方に西傾斜の撓曲構造が、第十五号排水川沿いの低地をはさんで、西側に南北方向の活動的なふくらみ(活背斜)が認められる。

 馬追断層:活断層研究会編(1991)で馬追断層aとされているもので、ほぼ北北西−南南東の走向で13kmの延長である。コムカラ峠の南東から陸上自衛隊東千歳駐屯地の東部をとおり、早来町富岡のフモンケ川西岸沿いに早来工業団地北東部に至り、早来市街の西方の鶴の湯温泉付近まで続き、東側が落ちた逆向き低崖を示す。本断層の北部の東側では、本断層から北に向かって分岐するように活断層の疑いのあるリニアメントが2列ほど認識できる。本断層の東側には馬追丘陵南部の主スラストとみなされる早来断層(第四紀断層)が0.6〜1km間隔でほぼ平行して走り、両者の間は構造谷となっている。本断層南部の700m±西側には嶮淵断層がほぼ平行して走るが、両断層の間およびその北方・南方延長部は15〜25mの高低差の西向き傾動帯となっている。

 嶮淵断層:ほぼ北北西−南南東の走向で変位地形として確実な部分の長さは2.7km(疑いのある部分を含めると約8km)である。千歳市駒里ホカンカニ川付近から早来町富岡の農林水産省種苗管理センター農場内をとおり北海道クラッシックゴルフ場東側付近に続き、確実な部分では東側が落ちた逆向き低崖を示す。西側は西へ傾動する。