(2)岩見沢測線

[測線・測定概況]

@測線・測定概況

図3−2−1−6に探査測線図,表3−2−1−3に測線測量結果を示す.

測線は,南東−北西に延びる直線上の市道18号線上に設定した.交差点や自動車の出入口等のために,受振器を置けない箇所や横方向にオフセットをつけて受振器を置いた箇所もあった.

受振器はほとんどの場合,直接地面にスパイクで固定したが,一部,住宅前などで道路脇に地面が露出していない部分については,ピックスタンドを使用して設置した.発振はアスファルト舗装道路上で行った.

本地区の測定に際しては,自動車のノイズが混入すると,その振幅レベルが大きいために垂直重合の効果が上がらない場合もあった.そこで,そのような場所では,自動車ノイズが混入するチャンネル数を最低限に抑えるために,垂直重合数を少なくして数セットのデータを取得し,データ処理の際に自動車のノイズの大きいデータをあらかじめ除去しておいてから垂直重合を行うなどの工夫をした.

なお,測定状況および測線状況を図3−2−1−7図3−2−1−8図3−2−1−9図3−2−1−10図3−2−1−11(写真)として示す.

A測定仕様

本測定に先立ち,発振周波数,垂直重合数,サンプリング間隔等の測定パラメーターを決定するために,パラメーターテストを実施した.

表3−2−1−2に,採用した測定パラメータを示す.

また,図3−2−1−12に上記パラメータで測定したショット記録を示す.ショット記録上で,いくつかの反射波が明瞭に読みとれる.

[データ処理結果および地質構造解釈]

@データ処理結果

データ処理で用いた各種フィルター等のパラメータはパラメータ一覧表3−2−1−4に示す.また,処理結果は,マイグレーション前時間断面図,マイグレーション後時間断面図,マイグレーション前深度断面図,マイグレーション後深度断面図として示した.通常,反射断面のトレ−ス間隔(CDP間隔)は受振点間隔の1/2であるので,今回のトレース間隔は,2.5m になる.各断面図におけるトレース間隔は1mm で表示しているので,水平方向の縮尺は1/2,500となっている.時間断面図では,縦軸は往復走時(秒)で1秒を20cmで表示している。断面の上には代表的な速度解析結果および地表の標高(m)を示し,サイドラベルには測定仕様および処理内容を付けた.深度断面図では,縦軸を標高(m)表示として縮尺を水平方向と同じ1/2,500で表示した。したがって,縦横比は1:1となっている.各トレ−スは見やすくするために,基準線から右側に振れた部分(データとしては+の値に対応する柔らかい地層から堅い地層に地震波が入射する際に発生する反射波の極性)を黒く塗りつぶして表示してある.

A反射イベントの分布状況

図3−2−1−13にマイグレーション前時間断面図(1/5,000),図3−2−1−14にマイグレーション後時間断面図(1/5,000)を示す.

マイグレーション後時間断面図において時間0〜100msの間では,水平な反射面が多数認められる.特に時間50ms付近には,ほぼ水平の連続性の良い強い反射面(S−1)が認められるが,測線上150〜350mの区間では,この反射面の連続性が悪くなっている.また,測線上150〜350mの区間では,時間200ms以浅の反射面も不明瞭となっている.時間60ms以上については北西方向に傾斜する反射面がほぼ平行に多数認められる(S−2,3など).ただし,測線上300m付近の時間400ms付近では複数の強い反射面からなる反射波列群に不連続が認められる.

マイグレーション前後の反射断面図を比較すると,測線の西北端では,反射面が不明瞭となっている.反射面が北西に傾斜しているため,マイグレーション処理によって反射面が南東側(真の質方向)に移動するためである.

B反射断面の解釈

図3−2−1−15に,解釈を加えたマイグレーション後深度断面(1/5,000)を示す.

深度変換は,速度解析で得られた重合速度を考慮して,地表から反射面S−1までは1,500m/s程度,それ以深については2,000〜2,500m/s程度の速度を用いて深度変換した.

 調査地区の比較的浅部には,新第三系である峰延層,追分層およびその下位に岩見沢層,川端層が西傾斜で分布し,その上位に第四系が水平に覆っていると判断推定される.また,測線上150m付近に岩見沢断層逆向き小崖1(IBT1),測線上1,000m付近に岩見沢断層主撓曲(IMF)とみられるリニアメントが空中写真判読,地表踏査により確認されている(図3−1−1−1図3−1−1−11).

深度断面図において,標高0m付近に認められる反射面S−1は速度解析により区間速度1,500m/s程度が得られていること,および反射面S−1を境にして浅部と深部では反射パターンが著しく異なることから,反射面S−1は第四系の基底と判断される.

反射面S−1は,測線上150〜350m付近では不明瞭かつ連続性が悪くなっており,特に測線上150〜250m付近では直下の反射面も不明瞭となることから,断層構造に伴う構造異常が指摘される.これは,岩見沢断層逆向き小崖1(IBT1)に対応している可能性がある(赤色破線A).

また,測線上300m付近では,標高−300m以深に認められる反射面の連続性が悪くなっており,撓曲構造とも見て取れる反射面の傾斜変化が認められる.この付近に岩見沢断層逆向き小崖1(IBT1)と同様な断層等がある可能性も考えられる(赤色点線B).また,測定点850m付近から西側において,反射面S−1はわずかではあるが北西に傾斜しており,これが岩見沢断層主撓曲((IMF)に対応するとも考えられる.ただし,P波での反射法地震探査においては,初期に到達する直接波,屈折波,表面波などによる影響から,深度50m以浅の反射波の分離・検出は難しく,また,静補正(「データ補正」の項参照)による影響もあることため,50m以浅において得られているイベントの信頼性は,P波を用いた探査の原理上,一般的に低くなるのは否めないことに注意を要する.

反射面S−1以深については,全体的に北西の同斜構造となっており,新第三系である峰延層,追分層,岩見沢層さらには川端層などに対応すると考えられる.図では,多くの明瞭で連続する反射面が得られているが,反射パターンとしてはおおきく3つのパターンに分けられる.各層の岩相などを参考にして,反射パターンと地層区分の対比を行った結果を以下に示す.

@)北西傾斜を示す連続かつ平行した反射面が多数認められる領域

測線の中央部から北西側の反射面S−1の直下にあたり,図では黄色で色づけしている.これらは,おもに砂岩主体の峰延層に対応すると思われる.

A)連続した反射面が認められない領域

峰延層の下位に分布するシルト岩優勢の追分層に相当すると思われる。上記@の領域の下位に位置し,厚さは300m程度.

B)北西傾斜を示す明瞭な反射面が多数認められる領域

追分層の下位に分布する硬質頁岩(板状互層を呈する)岩見沢層および砂岩泥岩互層の川端層等に対応するものと思われる.