(1)概 要

調査箇所は岩見沢市(市街地)の緑ケ丘地区の市道沿いの測線(岩見沢測線)と早来町富岡の種苗管理センター農場北側の道々沿いの測線(早来測線1)であり,活断層の性状とそれを取り巻く周囲の地質構造を1,000m級の深部まで調査することを目的として選んだ.具体的には岩見沢測線は,人口集中地域の中軸に活断層が存在するが,開発により地形改変が進みかつ地質調査対象露頭が少ないことから,活断層とそれを取り巻く地質構造を把握するために設定した.一方,早来測線1は,その周辺は人口の密集する千歳市街および千歳空港に隣接する地域で,活断層が逆向き低断層崖としてとらえられているが,厚い火山灰層におおわれ,その性状が不明確なことから,その性状解明と周囲の地質構造をさぐるために設定した.探査は委託により株式会社ダイヤコンサルタントが平成10年10月5日〜同11年1月29日の工期(現地調査期間:平成10年11月10日〜20日)で実施した.

[発注および担当]

発注者:北海道立地下資源調査所(担当:環境地質部 岡 孝雄)

受注者(実施部署):株式会社ダイヤコンサルタント 東京事業部物理探査部 

             埼玉県大宮市吉野町2−272−3  TEL 048−654−5294

             管理技術者:阿蘇弘生

             主任技術者:阿蘇弘生

             現場代理人:石垣孝一

             データ処理:谷 和幸

[探査作業]

現地における探査は図3−2−1−1に示すような作業の流れで実施する.以下,現地作業について簡単に記述する.

A現地踏査および道路申請等

測線決定のため現地踏査を行い,リニアメントや断層通過が予想される範囲の絞り込みを行って測線位置を決定する.

測線が一般供用されている道路である場合には,所轄の警察署に道路使用許可申請を行う。また,行政機関へ調査内容等の連絡を行い,測線の道路沿いの住民には実施前にチラシ若しくは口頭により説明を行って作業が潤滑に行えるようにする.

A測線設定および測量

水平距離で受振器設置ヶ所や発振地点に目印をつけ,当該地点の水準測量を実施する。測線を設けた道路等が曲がっている場合には,XY座標測量を行う.

B測定

受振器・ケーブル展開:予め設定された測線上に5m間隔で受振器(f0=40Hz,上下動,6個グループ,個々の受振器間隔は1mになる)を一度に約200地点(約1,000m区間)にセットする.各受振器は本線ケ−ブル,中継ケ−ブルを介して専用観測車に搭載された地震探鉱機に接続する.

バイブレータ震源:震源には,火薬,加速型重錘落下,バイブレータ等々があるが,本業務では,測線の条件(道路の保守等),探査能力(分解能,探査深度等)から勘案してバイブレータ震源を使用する.震源の模式図を図3−2−1−2に示し,その機能について以下簡単に説明する.バイブレータ震源は一般にスイープ波形を発生する震動装置を備えた震源のことをいう。スイープ波形とは時間軸上で発振周波数を連続的に変化させた波形のことで,周波数の変化率が一定で直線的なものをリニアスイープ,非線型なものをノン・リニアスイープという.図3−2−1−3aに示すようにパルスは全ての周波数の波が時間t=0のところで同位相の状態で重ね合わさったものであると考えられることからから,逆にあらゆる周波数の正弦波を何らかの方法で発震させることができればパルスを作り出すことが可能である.しかし,現実には機械的或いは電気的な限界があり,図bのように限られた区間の周波数しか取り扱えないことから,それらを重ね合わせた波形は図cのように完全なパルスではなく,両側に少し震動(サイドローブ)した波形になる.バイブレータ震源は,この原理を応用してスイープによって広範囲にわたる周波数の波を発生させることで,よりパルス的な波を取り出すことができる震源である。バイブレータから地中に送り込まれたスイープ波形(図3−2−1−4a)は地下のある反射点(図3−2−1−4b)で反射して測定器に入力する.この時の記録波形(図c)と基準信号(図a)とを相互相関処理することによって図dに示されるような反射波形が得られる.

測定作業:展開作業などの準備作業が終了した後,測定パラメータを決定するために垂直重合数(スイープ回数),スイープ時間,発振周波数範囲,最小オフセット距離(発震点ー受震器最小距離)などについてテストをする.テスト結果を検討して,各測線の最適パラメータを決定して本測定に移行するる.1回の測定では同時に120地点の受振器で受振した信号を記録する。受振器で感知された反射波などの波動データは,電圧信号に変換され,ケーブルを介して観測車(探鉱機)に転送される.モニター出力された記録の良否を検討し,悪ければ再度記録を取り直す.良好な記録と判断されれば,探鉱機システムの磁気テープに収録する.

1回の測定が終了すれば,前述のマルチチャンネル測定の項で説明したように受振器間隔分移動して再び同じ測定を実施する.この作業を測線の端まで繰り返し,1測線の測定を終了する.

C測定使用機器

探査に使用する主要な測定機器を表3−2−1−1に示す.

[データ処理]

@データ処理の流れと各処理の内容

図3−2−1−5に標準的なデータ処理の流れを示し,以下にその概要を述べる.

フォーマット変換:磁気テ−プに記録されているデ−タを,処理ソフトで扱えるフォーマットに変える処理.

CDPソ−ティング:CDP重合を行うために,発振毎にまとまっているトレ−スを,共通反射点(CDP)をもつトレ−ス毎に編集する処理.

デコンボリュ−ション:多重反射波等の繰り返しノイズを取り除く処理。

静補正:発振点や受振点の標高の違い,表層(あるいは風化層)の厚さの違い等によって生じる反射波の時間的なばらつきを補正する処理.

速度解析,NMO(動補正):共通反射点記録を重合するために,各トレ−スの反射走時を垂直走時にそろえる処理を動補正というが,この補正を行うためには重合速度がわからなくてはならない.そこで動補正のまえに速度解析が行われる.

CDP重合:動補正した各トレ−スを重ね合わせる処理。重合するトレ−スの数がNのとき,水平N重合と呼ぶ。重合処理はランダムノイズや多重反射等のノイズの消去に効果がある。

マイグレーション:通常の重合処理断面は傾斜した反射面や複雑な形状をした反射面を正しく表していないのでこれを正しい位置や形状に戻すための処理.

フィルタ−:特定の周波数帯域の信号を取り出すための処理.

スケ−リング:記録の振幅をそろえる処理.

Aデータ処理ハードおよびソフト

・ハ−ドウエア  パワーチャレンジ,スーパーコンピューティングサーバー

           (米国,シリコングラフィックス社)および周辺機器

・ソフトウエア  UNIXオペレ−ティングシステム

          DISCO反射法デ−タ処理ソフト

          FOCUS会話型反射法デ−タ処理ソフト

          (米国パラダイム社;旧コグニサイスディベロップ社)