(1)文献調査

(a)主な文献・資料

本地域の活断層および第四紀・構造地質を中心とした地質・地形に関する文献について収集した.また,地質調査ボーリング資料を収集したほか,2編のボーリングデータ集と道立地下資源調査所収集の既存ボーリングデータを参考にした.

【主要文献リスト】20編

秋葉 力(1983)角田盆地の周氷河現象.日本地質学会北海道支部昭和58年個人講演要旨集,1−2.

北海道鉱業振興委員会(1979)北海道の石油・天然ガス資源−その探査と開発(昭和43〜51年).北海道商工労働観光部資源エネルギー課,205p.

北海道鉱業振興委員会(1990)北海道の石油・天然ガス資源−その探査と開発(昭和52〜63年).北海道商工労働観光部資源エネルギー課,157p.

岩見沢団体研究グループ(1983a)茂世丑低地・角田盆地の茂世丑層と角田層.日本地質学会北海道支部昭和58年個人講演要旨集,3−6.

岩見沢団体研究グループ(1983b)角田層と茂世丑層の絶対年代.北海道における更新世中期以降の海水凖変動とネオテクトニクス,講演要旨集,日本地質学会北海道支部,4−5.

岩見沢団体研究グループ(1984a)石狩低地帯東緑,角田盆地の周氷河現象.地球科学,38,64−66.

岩見沢団体研究グループ(1984b)支笏下降軽石堆積物10(Spfa10)の堆積年代 −日本の第四紀層14C年代(152)−.地球科学,38,70−71.

岩見沢団体研究グループ・木越 邦彦(1976)北海道空知中部における茂世丑層の堆積年代−日本の第四紀層の14C年代(111)−.地球科学,30,42−43.

活断層研究会(1980)日本の活断層 分布図と資料.東京大学出版会,363p.

活断層研究会(1991)新編日本の活断層 分布図と資料.東京大学出版会,437p.

建設省国土地理院(1996)1:25,000都市圏活断層図T札幌地区.日本地図センター.

小峰由布子・八幡正弘(1999)中央北海道栗沢−栗山地区の粘土資源.地下資源調査所報告,No.70,45−61.

松野久也・田中啓策・水野篤行・石田正夫(1964)5万分の1地質図幅「岩見沢」及び同説明書,184p.

斉藤 雄一,小椋 伸幸(1994)石狩平野北部地域新三系のシーケンス層序.石油技術協会誌,59,1,31−42.

佐々保雄・田中啓策・秦 光男(1964)5万分の1地質図幅「夕張」及び同説明書,北海道開発庁,184p.

重川 守,近藤 和也,早稲田 周(1990)北海道石狩北部地域の油・ガス田−その地球化学と地質的背景−.石油技術協会誌,58,1,32−36.

外崎徳二(1983)石狩低地帯に於ける更新統の層序と対比.北海道における更新世中期以降の海水凖変動とネオテクトニクス,講演要旨集,日本地質学会北海道支部,12−15.

鶴丸俊明・出穂雅美(1998)北海道.美唄市光珠内町南における採取資料.旧石器考古学,57,91−93.

宇納 貞男(1993)砂岩貯留層分布予測に関するサイスミック・ストラティグラフィー −北海道石狩平野峰延構造を例として−.石油技術協会誌,58,1, 58−66.

【ボーリング資料集】2編

北海道建築士会空知支部岩見沢分会(1989)岩見沢市の地盤調査資料.岩見沢建設協会.

北海道空知支庁南部耕地出張所(1990)空知地区南部耕地出張所管内ボーリング資料報告書.北海道農業土木協会.

【ボーリング調査報告書等】15編

北海道民生部・明治コンサルタント株式会社(1975)昭和50年身体障害者総合援護施設設置事業のうち現況調査委託その1報告書.

北海道民生部福祉課・明治コンサルタント株式会社(1976)昭和51年身体障害者総合援護施設に係る地下水調査業務報告書.

北海道空知支庁南部耕地出張所・常盤ボーリング株式会社(1979)昭和54年圃場整備事業上幌向地区土取調査報告書.

北海道空知支庁南部耕地出張所・常盤ボーリング株式会社(1979)昭和54年 圃場整備事業北斗地区土取場ボーリング調査報告書.

北海道空知支庁南部耕地出張所・常盤ボーリング株式会社(1980)昭和55年 圃場整備事業夕張太地区地質調査報告書.

岩見沢市役所・北海道開発コンサルタント株式会社(1990)平成2年度岩見沢市ふるさと記念館実施設計地質調査報告書.

岩見沢市役所・基礎地盤コンサルタンツ株式会社(1992)平成4年度市営住宅(日の出南団地)建設地盤調査報告書.

岩見沢市役所・大成基礎設計株式会社(1994)平成6年度光陵中学校改築地盤調査委託報告書.

岩見沢市役所・株式会社建設コンサルタント(1993)平成5年高齢者福祉センター(仮称)建設地盤調査委託報告書.

栗沢町建設課・防災地質工業株式会社(1995)平成7年度由良北線地質調査委託報告書.栗沢町建設課・防災地質工業株式会社(1996)平成8年度由良西線改良地質調査委託報告書.

地域振興整備公団北海道支部・株式会社シン技術コンサル(1992)平成4年度栗沢町由良区現況調査業務地質調査報告書.

地域振興整備公団北海道支部・株式会社構研エンジニアリング(1996)平成7年度道央栗沢橋梁調査設計業務地質調査報告書.

地域振興整備公団北海道支部・和光技研株式会社(1998)平成10年度道央栗沢団地用地確定測量調査業務報告書.

  (一部ボーリング資料集と重複)

(b)文献調査結果

本地域の活断層については,「日本の活断層」(活断層研究会,1980,1991)の記載と建設省国土地理院(1996)の「都市圏活断層図」に一部記載されているのみである.

活断層研究会(1980,1991)によれば,調査地域北部の岩見沢市付近に確実度Uの「岩見沢断層」(走向NNE,長さ5km,活動度C級)が,また南部の栗沢町付近に確実度Tの「栗沢断層」(走向N−S,長さ9km,活動度C級)が,それぞれ分布するとされている.いずれも西側隆起の逆向き低断層崖であり,両者の間に幌向川沿いの沖積低地が分布しているためにその連続性は明らかではない.またこれらに併走して東側の山地にも1〜2列のリニアメント(確実度V)が記載されている.

建設省国土地理院(1996)によれば,馬追丘陵の西麓には東側隆起の活撓曲(走向NNE)が認められており,この北方延長部が調査地域南部に延びるように図示されている.この活撓曲は「栗沢断層」と呼ばれているが,上述の「栗沢断層」とは隆起センスが異なる.

栗沢断層は,本来は調査地域の東側に南北に伸びる第三系の背斜構造(栗沢背斜−岩見沢背斜)の西翼に発達した地質断層名であり,東側隆起の逆断層である(佐々ほか,1964).その位置も,活断層研究会(1980, 1991)のリニアメントよりも東側にある.なお,この地域の西方の石狩低地では,古くから石油・天然ガス探鉱が実施されその一部が公表されている(北海道鉱業振興委員会,1979,1990).これによれば,岩見沢−栗沢地域の山地と低地の境界部には,背斜の西翼部に,西に衝上する大規模な逆断層が推定されており,重川ほか(1990)はこれを「馬追スラスト群」と呼んでいる.

この地域の地形や第四系に関する研究は少なく,とくに段丘など地形面に関してはほとんど研究がない.このため,活断層研究会(1980,1991)では平均変位速度を示していない.また,断層の最新活動期等年代に関する検討は全く行われていない.

活断層の分布地域は,佐々ほか(1964)や松野ほか(1964)によれば,更新世の茂世丑層の分布地域である.茂世丑層についてはその後,調査地域北方の光珠内地域で33,780y.B.P.の14C年代が報告され,支笏第1テフラ(Spfa1:31−41ka)の再堆積軽石を含むことが確認されている(岩見沢団体研究グループ・木越,1976;岩見沢団体研究グループ,1983b).最近,栗沢地域の粘土資源調査が行われ,当地域の茂世丑層の層序と年代が新たに示された(小峰・八幡,1999).これによれば,茂世丑層のSpfa1二次堆積物を含む上部層の基底付近に含まれる材の14C年代(AMS)は45,010±2,940y.B.P.である.また,活断層研究会(1980,1991)の「栗沢断層」のリニアメントに相当する部分で,茂世丑層の撓曲露頭を記載している.ー方,調査地域北方の光珠内地域では,茂世丑層直上のローム中に阿蘇4テフラ(Aso−4:70−90ka)が報告された(鶴丸・出穂,1998).このように,茂世丑層に一括されている地層については,問題がのこっており,断層の平均変位量を確定するためには,この地層の層序・年代の決定が重要である.