(4)まとめ

以上から明らかなように,中部地域では主要な調査対象であった泉郷断層については変位地形(逆向き崖)が明瞭であり,コムカラ峠の北海道横断自動車道路工事現場では高位段丘堆積物を20m切り,1万数千年前に降灰した恵庭a火山灰を1〜2m変位させる様子が詳しく確認できた.そのため,同断層では1万年前頃以降の最新活動の確認が今後の最大の課題となる.そのための調査地点として嶮淵川が泉郷断層を横切る泉郷信田温泉付近は現河川氾濫原堆積物が分布することから,ボーリング調査,トレンチまたはピット調査地点として最適であると判断できる.それらの調査の前段調査として,この付近で極浅層反射法地震探査を実施することが必要と判断する.

次に,南長沼断層(スラスト)については,泉郷断層(バックスラスト)とセットになって嶮淵川−シーケヌフチ川構造谷を形作っており,馬追丘陵形成の基本的な断層として注目する必要があるが,その実態解明は必ずしも十分ではない.そのため,さらに別の形での調査が必要となっている.

北海道横断自動車道路沿い断面解析の結果からは泉郷断層の西側前縁に活構造ともいえる小褶曲構造を見いだした.このような変曲部分は,南部地域の馬追断層西側では嶮淵断層(活断層)としてとらえられている.

千歳地区表層地質調査報告書(岡,1998)では,協和ブロックおよび泉郷−早来ブロック尾根筋などに分布する堆積物を東千歳層(最終間氷期〜最終氷期前半の堆積物)として取り扱っが,南部地域の自衛隊駐屯地内での調査をきっかけとして再吟味した結果,断面解析にあるように高位段丘堆積物(早来層)として区別して扱うべきとの判断になった.