5−2−4 調査結果

ピストンコアリングは、盛り上がり部分とそこから90m離れたそうでない部分の2ヶ所で実施した。図5−10に調査地点の断面を示す。試料が採取できたのは盛り上がりのないサイト1で1本、盛り上がった異常堆積構造部のサイト2で3本であった。なおサイト2のNo3は、盛り上がりの内部堆積物が比較的粗粒でピストンコアラーの自重落下では突き刺さらないことも予想されたため、サンプルチューブをたたき込むことによって採取したものである。採取された総コア長は、36.2mであった。

試料は、全体に暗緑色の粘土質シルトを主体とし、層相の変化に乏しい。しかしながら音波探査記録で海底面下11mに分布する強い反射面の深度で、サイト1のコア及びサイト2のNo1、No2コアとも、密度測定で周囲に比べて大きい値が得られ、またコア観察によって厚さ2〜20cmのアカホヤ火山灰が認められた。したがって、この強い反射面はアカホヤ火山灰層と認定される。問題の盛り上がり構造部の試料はNo2とNo3で採取されている。No2の最下部には小礫を含む砂が、またNo3でも深度16m以下に小礫を含む砂層がシルト層と互層状に分布している。この結果、盛り上がり部は断層活動に伴う噴砂に見られるような均質な砂を主体とする堆積物ではなく、小礫を含む比較的粗粒な堆積物から構成されていることが判明した。なお試料中の貝殻片による年代測定結果により、No3の上位から下位にかけて順に6,300±60yBP、6,820±50yBP、そして盛り上がり内部の試料から7,560±60yBP、8,390±50yBPの完新世前期を示す年代値が得られた。

ピストンコアリング作業と同時に実施したこの付近のソノプローブによる精査結果を図5−11に示す。メッシュ状の探査により異常堆積構造の三次元的な分布を求めると、盛り上がりは幅約100m、高低差約5mで、陸上の断層方向に延びるのではなく、津久根島から北西方向に延びていることが判明した。

以上の結果から、本地点は過去7,000〜8,000年前頃に津久根島を起点として潮流によりできた砂州状の堆積構造であることが判明した。