5−1−1 調査概要

海底の活断層調査では、音波探査が最も効果的手法として使われる。海上から発射した音波が、海底や海底下の地層の境界で反射し跳ね返ってくる。この音波を捉えて海底下の地層の断面図、すなわち音波探査記録がつくられる。海底活断層調査の利点のひとつが、海底に地表地震断層が現れた場合、その跡が時間とともに浸食され削られてなくなってしまう恐れが少ないことである。海潮流の流れが速く水深の浅い場合や氷河期に陸地となって浸食を受ける場合もあるが、基本的に海底は堆積の場となっていることから断層変位の記録が保存され易い。

ソノプローブ音波探査による海底活断層の検出事例を図5−1(1)に示す。 ほぼ水平に堆積した地層が図の中央で2本の断層によって変位しているのが明瞭に捉えられている。変位した地層中の特に強い反射面は別の調査で約6400年前に堆積したアカホヤ火山灰と判明しているので、この2本の断層は比較的最近動いた活断層であることを示している。 このように、音波探査では海底下の地層断面が直接見えるという利点があるが、測線直下の情報しか得られないという欠点もある。したがって、未知の海域の調査や断層が検出された場合の延びの方向を明らかにするためには、複数の測線による調査が必要である。また音波探査の波長による解像度の精度を理解しておく必要がある。ソノプローブ音波探査の場合、発信周波数は1,000〜10,000ヘルツである。この周波数では音波の波長は約15〜150cmとなり、少なくとも1波長より細かい精度を求めることはできない。