4−4 五日市トレンチ

空中写真判読及び地表地質踏査で得られた情報をもとに、五日市断層のトレンチ調査地点を選定し掘削調査を実施した。調査地の西方には、窓ヶ山(標高711.4m)、向山(標高665.9m)に代表される脊梁山地が北北東−南南東方向に延び、東方には、標高185.4m、290.8mの山地が分布する。この間には谷底低地が発達し、八幡川が流下する。窓ヶ山、向山の東麓に発達する河谷の中には、系統的に右ずれ屈曲(変位量約50m)しているものがあり、五日市断層の位置がほぼ推定できる。

トレンチ掘削地点は、五日市断層の北端部、佐伯区上小深川の谷底部である。図4−12及び図4−13にトレンチ周辺の平面図を示す。本地点は二本の谷が合流するところで、谷底の幅は約30m、傾斜は約13%である。谷筋は右ずれ屈曲しており、その変位量は約80mである。屈曲した谷筋の前面には標高184.9mの尾根が閉塞丘状に残っている。

二本の谷筋の屈曲点を結んだライン(北北東−南南西方向)に断層線を推定し、まず比抵抗二次元探査を行い、ある程度の厚さをもつ堆積物の存在を確認した。次に断層線を横切るようにトレンチを設計した。

トレンチの長軸はほぼ東西方向で、長さ約25m、トレンチ底の幅1〜2m、深度は約4mで、壁面の勾配は60°〜70°とした。トレンチは、2台のバックホウで荒掘削したのち、シャベル、ねじり鎌、ブラシ等を用いて人力で平滑にし、赤いスプレ−によって1m間隔のグリッドを印した。壁面の観察に際しては、汲み上げた沢水で壁面をクリーニングした。