(1)構成地質とその分布

広島花崗岩類は、山腹斜面や谷斜面で広く認めることができる。ただ標高が相対的に低い八幡川が湾曲する五日市町下小深川付近から下流域ではマサ化が著しく新鮮岩盤の露頭は認められない。広島花崗岩類の中には、熱水変質による劣化も認められる。熱水変質は苦鉄質鉱物を粘土化させ長石類も白濁化させており、程度が強いと石英のみを残して全体に粘土化するなど、己斐断層分布域と同様の変質状態をみせる。分布としては、古野川及び野登呂川の谷地形周辺やさらに分水嶺を越えて沼田町側の奥畑川流域で特に顕著である。

この北北東に延びる窓ヶ山山列の南東側裾部は、幅広い変質帯を形成している可能性が高い。

崖錐及び崩積性堆積物は、踏査範囲の北端のはずれになる沼田町椎原地区でその分布と堆積時代を特徴的に示している。ここには、現在の谷の河床から約15m上方で基盤の花崗岩を覆って少なくとも厚さ3mの土石流性の堆積物が分布している。この堆積物は淘汰が悪く、含まれる礫径は5cmから1mと様々である。マトリックスは小礫や砂主体となっている。この堆積物中には、砂礫層にはさまれて河床勾配とほぼ同勾配の厚さ20cm程度の姶良火山灰層が挟在されている。したがって火山灰層がリワークでない限り、ここに分布する土石流性堆積物は更新世に属することになる。本地点以外ではこのように明らかに更新世と思われる古い第四紀層を確認することはできなかった。

現河床堆積物は、比較的谷幅の広い谷には例外なく認められる。地表踏査ではその断面露頭をみることはできないが、後述する五日市断層トレンチ地点において、現在の谷を埋める砂礫層が3〜30cmの亜円〜亜角礫を多く含み、炭化物の年代測定によって約1000年前の年代値を示すものがあることが判明した。