(3)佐伯区五日市町倉重地区周辺

図4−4

・空中写真の種類:

昭和41(1966)年撮影、縮尺1/2万、国土地理院、写真ナンバーCG−66−5X,C11−8及びC11−9。

・地形概観

本地点は、図上部の薬師が丘の丘陵地帯を除いて、ほぼ一様な南東向き斜面を形成している。この斜面の中には約300mでほぼ等間隔に北西から南東に流れる小河川が発達している。小河川の谷幅は比較的広く、図面右側の標高が下がった付近では扇状地状に広がっている。

・変位地形

本図の上部には、南東に小さく張り出した尾根にくびれが認められ、その南南西方向にも同様の形態をなす尾根が存在する(矢印)。このくびれを結ぶリニアメントの方向は(1)で述べたリニアメントの延長方向である。さらに南南西方向の薬師が丘の丘陵のなかには、北北東に発達した直線谷とその源流点となる鞍部(矢印)が連なっている。その南南西の@には、北西から南東に流れる小河川があり、リニアメント延長上で屈曲しているのが認められる。この小河川は、比較的広い河床幅を有して北西から流れてきて、@で南南西に屈曲しさらに南東に屈曲した後、緩斜面を浸食して南東に流れている。@の上下流での流路のずれから測定した屈曲量は約50mで、ずれの方向は右ずれとなる。こうしたリニアメント上での谷の屈曲は、断層の横ずれ変位活動を受けて形成されたものと判断される。

これより南南西側にも北西から南東に流下する同様の谷が多数発達しているが、上記@のような屈曲点が認められる谷はない。

以上の結果から、五日市断層は「新編日本の活断層」に記載されたほぼ同じ位置に発達し、第四紀に形成されたと考えられる谷を系統的に屈曲させ、そのずれのセンスが右横ずれである活断層であることが確認された。その証拠となる断層変位地形は、佐伯区五日市町上小深川地区付近で明瞭にみることができる。空中写真判読によって右横ずれの活断層と認定される長さは、北部の佐伯区五日市町と安佐南区沼田町との行政境界付近から南部の佐伯区五日市町倉重地区付近までの約5.5kmである。