3−4 己斐上五丁目トレンチ

空中写真判読および地表地質踏査で、己斐断層の位置がほぼ確定された己斐上五丁目の谷の屈曲部において、トレンチ調査を実施した。

トレンチ周辺には、西方に大茶臼山(標高413.2m)から権現峠にかけての、北北東−南南西方向に延びる脊梁山地が、東方に同じく北北東−南南東に延びる標高200−300mの山地が発達し、その間を八幡川が流下している。大茶臼山山麓では、北西−南東方向に発達する数本の河谷の系統的な屈曲が顕著であり、己斐断層の位置がほぼ確定できる。

トレンチ掘削地点は、己斐断層のほぼ中央、己斐上五丁目の谷底部である。図3−16にトレンチ位置周辺の平面図を示す。谷底の幅は30〜50m、傾斜は約15%である。谷筋・尾根筋ともに、右ずれ屈曲しており、その変位量は約30mで、屈曲した谷底地形に応じて6段の休耕田がある。谷の両岸の屈曲点と尾根の鞍部を結んだ、谷底を北北東−南南西に横切るラインに断層線を推定した。トレンチはそのラインを横断するように設計し、岩盤深度の浅い南側のトレンチをNo.1、岩盤深度が深く、堆積物が厚く分布する北側のトレンチをNo.2、さらにこの2つを結ぶトレンチを連絡トレンチとした。

No.1トレンチの長軸はほぼ北西−南東で、長さ約25m、トレンチ底の幅2〜2.5m、深度は約2mである。No.2トレンチの長軸もほぼ北西−南東で、長さは約17m 、トレンチ底の幅2〜3m、深度は約6mで、両トレンチとも壁面の勾配を60〜70°とした。

トレンチは、バックホウで荒掘削したのち、シャベル、ねじり鎌、ブラシ等を用いて人力で平滑にし、水平・垂直方向に水糸を張って1m間隔のグリッドを設置した。壁面の観察に際しては、汲み上げた沢水で壁面をクリ−ニングした。

スケッチは勾配60〜70°の壁面上のグリッドに準拠して行い、各スケッチの縦軸は法面上での長さである。スケ−ルは全体を1/20で行い、断層付近を1/10で行った。