(2)【No.2トレンチ】

ここでは、基盤とそれを覆う8層の堆積物に層序区分できる(図3−17図3−21及び図3−22)。

上位より、

有機質土(T):層厚は約0.3mで黒褐色を呈する。現耕作土であり、掘削除去した。

礫混じり土(U):層厚は0.3〜0.5mで褐色を呈する。基質は粗粒砂で、φ5〜20cmの角礫を含む。水田の床土もしくは石垣裏側の盛り土であり、掘削除去した。

砂質土層(V):層厚は0.3〜0.4m、中〜粗粒砂で構成され局所的にグレイディング構造がみられる。全体的に灰色を呈する。石垣を築造して水田にする前の表土と考えられる。西方に緩やかに傾斜する。

有機質土(W):層厚は0.3〜0.5mで黒褐色を呈する。木片を多量に含む有機質土層。下部にφ30〜60cmの巨礫が点在する。西方に緩やかに傾斜しつつ、徐々に収束し、連絡トレンチ壁面ではみられなくなる。

砂礫層(X):層厚は1 〜1.2mで、N面でのみ確認できる。マトリックスは粗粒砂で、褐灰色を呈する。全体的に巨礫と小礫が多く、中間的な大きさの礫が少ない。

砂礫層(Y):層厚は2〜3mで、マトリックスは青〜緑灰色を呈する粗粒砂からなる。礫はφ10〜30cmの亜角〜亜円礫からなるが、しばしばφ50cmの巨礫を含む。X層と比べて、砂質分が少なく、固結度もやや弱い。層内に厚さ20cm程度の粗粒砂層を挟む所があるが、連続性はない。

砂層(Z):S面に分布する。層厚は0.5m前後で、橙〜黄土色を呈する。φ3cm以下の小礫と粗粒砂を主体とする礫混じり砂層で、弱いラミナ構造が確認できる。最下部には、比較的連続性のよい酸化マンガン帯が分布する。下位の[層と層相が全く異なり、[層とは不整合の可能性がある。

砂礫層([):S面に分布する。層厚1mで、マトリックスは茶褐色を呈する。φ10〜30cmの亜角〜円礫を主体とした砂礫層で、最下部には、断層運動による垂直落差50cmの変位が認められる。

基盤岩:断層西側はカリ長石の目立つ粗粒花崗岩とマイロナイト化した変質岩が、東側は茶褐色中粒変質花崗岩が分布する。

断層部:基盤岩中に出現しており、走向は30〜35°、傾斜はほぼ90°である(図3−23)。断層面には暗青灰色の粘土が付着するが、幅は3〜20cmと変化に富む。断層よりも西側(上流側)の岩盤は比較的硬く、多くのクラックが発達するが、東側(下流側)の岩盤は強い変質を受けており、ねじり鎌で容易に崩すことができる。ここでも、シャ−プな断層面は断層より西側で、幅3cm前後で粘性度の高い粘土が直線的に付着する。これに対し東側では、粘土中に鉱物組織が残っており、緩やかに変質岩盤に漸移する様相を呈し、粘土と岩盤との境界は不明瞭である。また、トレンチS面では、断層を境に、東側の岩盤が約50cm相対的に沈降しているのが確認できる。この変位は[層を切っており、φ5〜10cmの亜円礫が破砕帯にクサビ状に落ち込んでいる。それらの礫の中には、長軸を垂直方向に配列するものもある。粘土は岩盤表層部でスプレ−状に拡がり、やや不明瞭となるが、断層の西側面(相対的隆起側の岩盤)には、約3cmの幅で張り付き、東側では落ち込んだ礫の間を充填している。

断層面には、断層が動いた時に形成されたと推定されるほぼ水平の擦痕が認められる。