(1)【No.1トレンチ】

堆積物は、堆積状態と層相をもとに、基盤とそれを覆う5層に層序区分できる(図3−17図3−18及び図3−19)。

上位より、

有機質土(T):層厚は約0.3mで黒褐色を呈する。現耕作土であり、掘削除去した。

礫混じり土(U):層厚は0.3〜0.5mで褐色を呈する。基質は粗粒砂で、φ5〜20cmの角礫を含む。水田の床土もしくは石垣裏側の盛り土である。

砂質土層(V):層厚は0.3〜0.4m、中〜粗粒砂で構成され局所的にグレイディング構造がみられる。全体的に灰色を呈する。石垣を築造して水田にする前の表土と考えられる。

砂礫層(W):断層直上では基盤を直接覆う。層厚は0.3 〜0.4mでマトリックスは黄橙色を呈する。φ10〜20cmの亜角〜亜円礫を主体とするが、しばしばφ30〜50cmの巨礫を含み、淘汰は悪い。谷を埋積した土石流堆積物と考えられ、最下部に有機質土を狭在する。

粘性土層(X):断層よりも下流側(東側)に分布しており、変質岩盤とほぼ同質の移動堆積物である。層厚は0.5m以上で、暗緑灰〜暗青灰色を呈する。

基盤岩:断層よりも上流側(西側)では、白灰色を呈するアプライト質変質花崗岩が、下流側では緑灰色変質花崗岩が分布する。

断層付近:基盤花崗岩中に出現しており、走向は30〜35°、傾斜はN面では約90°、S面で82°である(図3−20)。断層面は、幅約5cmの暗青灰色を呈する粘土を伴いながら、5 〜15cm幅の破砕帯を形成している。粘土は、破砕帯の西側の面で非常にシャ−プで粘性が高く、粘土中には鉱物組織はほとんどみられない。一方、破砕帯の東側の面では比較的粗粒になる。乾燥しており、粘性は低い。N面の岩盤表層部への断層の延長は、スプレ−状に拡がり、はっきりとした断層面(線)ではなくなる。この部分で岩盤は塊状に破砕され、その間隙を礫分を含んだややざらついた粘土が充填する。

また、S面では、破砕帯中に第W層最下部の有機質土が落ち込んでいるものや、φ7cmの円礫が、立った状態でくい込んでいるものが観察できる。さらに、この有機質土が、断層より東側ではみられなくなる。