(1)構成地質とその分布

踏査範囲内の地質は、基盤として広島花崗岩類の中粒角閃石黒雲母花崗岩と中−粗粒黒雲母花崗岩が分布し、その上位を第四紀の崖錐及び崩積性堆積物並びに現河床堆積物が覆うという比較的単純な構成となっている。その層序は以下のとおりである。表3−1参照

表3−1

広島花崗岩類は、武田山山列内の谷斜面、八幡川及び山本川流域に張り出した尾根斜面などで広く認めることができる。ただ中粒角閃石黒雲母花崗岩と中−粗粒黒雲母花崗岩の表層での区別は、一般に花崗岩に顕著な「マサ化」と呼ばれる深層風化のために困難である。マサ化は標高の低い地域ほど進んでおり、相対的に標高の低い八幡川や山本川流域で顕著である。新鮮岩盤の露頭は標高の高い武田山山列内の比較的急斜面地まで上がらないと分布していない。また広島花崗岩類の中には熱水変質の著しい場所も認められる。熱水変質は一般に苦鉄質鉱物を粘土化させ、長石類も白濁化させており、程度が強いと石英のみを残して全体に粘土化しているものもある。節理面に沿って白色の粘土鉱物が生成していることも多い。熱水変質部の分布は八幡川及び山本川の流域に多くみられ、高標高部では比較的少ないため、変質「帯」と呼べる可能性もあるが、今回の踏査では厳密なマッピングをしていないため可能性を指摘するにとどめる。

崖錐及び崩積性堆積物は、西区己斐上二丁目の鞍部や山本川流域の御鉢山墓地周辺に認められる。西区己斐上二丁目では後述するトレンチ調査によって、鞍部を埋める本堆積物が観察された。ここでは、礫が比較的小さくマトリックスも砂あるいはシルト質で全体に細粒物質からなっている。含まれている炭化物の年代測定により最下部で約2万年前を示すことから少なくとも下部は更新世に属する。山本川流域の御鉢山墓地周辺では、一旦谷を埋めてその後の河川浸食により谷壁に現れた土石流性の堆積物がみられる。時代は不明であるが形成過程から考えて古いことが予想されるためここに含めた。径5cm〜30cmの亜円礫を主体とした砂礫層であるが、中には径1mを超える巨礫もあり淘汰が悪い。

現河床堆積物は、比較的谷幅の広い谷には例外なく認められる。地表踏査ではその断面露頭をみることはできないが、後述する西区己斐上五丁目のトレンチ調査によって明らかになった。それによれば径5cm〜30cmの亜角〜亜円礫を主体とする砂礫層でシルト質の細粒分に乏しい。中には径1m程度の巨礫も含み淘汰が悪く、土石流性堆積物と推定される。炭化物の年代測定で約1000年前の年代が得られた。