(4)西区己斐上二丁目及び高須地区

図3−6

・空中写真の種類:

昭和14(1939)年撮影、縮尺1/1万、陸軍参謀本部(国土地理院所有)、写真ナンバーB−26,43及び44

・地形概観

己斐断層の南部分布域の判読結果については、以下のとおりである。本地点の図上部にほぼ東西方向の稜線が延び、これを分水嶺として北が前述(1)地点で述べた八幡川の流域、また南が直接瀬戸内海に面した流域となっている。この分水嶺付近は丘陵地帯となっておりほぼ西から東に向いた谷や分水嶺の鞍部を頂点とする北北東とその逆むきの南南西方向への谷が切れ込んでいる。一方図面下部は広島湾に面した低地帯で、所々に小規模な丘陵が見られるほかは谷地形などの起伏は少ない。

・変位地形:

ここでは丘陵部の中を北北東に流れる河川と南南西に流れる河川、及び両者の分水嶺をなす鞍部がほぼ直線状のリニアメントを形成している。この直線状のリニアメントのさらに南方では、南東に張り出した尾根に段差が認められる。またその南側は直線的に延びる小丘陵の西斜面の傾斜変換線へと続いている。ただし、このリニアメント上ではこれを横断するような谷の発達が乏しく、上述してきたような明瞭な右横ずれ地形を残していない。本図上部に矢印で示した谷は、屈曲しているものの屈曲した後の下流側の流心がはっきりしないまま他の河川と合流しているために横ずれが不明瞭である。以上のように、本図上部の鞍部より南については、己斐上五丁目付近や安佐南区安古市町付近でみられたようなリニアメントを横断する直線的な地形(変位基準面)に乏しいため、横ずれ変位が不明瞭となっている。

以上の結果から、己斐断層は最も新しい地質年代である第四紀に形成されたと考えられる谷を系統的に屈曲させた活断層であること、その証拠となる断層変位地形が断層のほぼ中央部にあたる己斐上五丁目付近のみならず、断層北部の武田山周辺にもよく保存されていることが確認された。空中写真判読によって活断層と認定される長さは、北部の安佐南区安古市町の武田山北西部付近から己斐上五丁目及び己斐上二丁目を経て西区高須地区付近までの約9kmの区間である。