(1)西区己斐上五丁目付近

図3−2

・空中写真の種類:

昭和41(1966)年撮影、縮尺1/2万、国土地理院、写真ナンバーCG−66−5X,C10−12及びC10−13。

・地形概観:

本地点の中央部には北東から南西に向かって小さな蛇行を繰り返しながら八幡川が流れ、大きな谷地形を形成している。八幡川の両岸斜面は10度〜20度の勾配をなすが、図中の北半分で比較的谷幅が狭く急峻である。八幡川両岸にはほぼ同じような密度で小河川が発達し、それらは右岸側では北西から南東に向かって、また左岸側では一部網目状の部分もあるがほぼ東北東から西南西に向けて流れて八幡川に合流している。

・変位地形:

八幡川右岸には10数本の小河川があり、北西からほぼ直線状に流下している。しかしながら八幡川に合流する手前付近において、直線的な上流を持つ谷に屈曲が認められる小河川が複数認められる(図中矢印で示す)。屈曲の形態はいずれも右ずれ、すなわち谷筋がその屈曲部を境に右側にずれた形(上流からみても下流からみても同様である)を示している。また本図には写真下方に矢印で示すように、谷の屈曲のみでなく西から直線的に延びてきた尾根が同じように右に屈曲した例も認められる。

これらの屈曲地形を昭和22年撮影の空中写真を基に今回作成した地形図(図3−3)に示す。本図は、図3−2のほぼ中央部にあたる。図中の1から3の谷がいずれも八幡川との合流手前で右に曲がり、さらに下流で左に曲がって、屈曲する前の上流部の谷の方向とほぼ同じ方向となって八幡川と合流しているのが読み取れる。またこれらの谷の間の尾根には鞍部が存在し、谷の屈曲と併せて北北東にほぼ直線に延びる明瞭なリニアメントを形成している。この地形図より読み取れる谷のずれの量は、1の谷が約30m、以下2が同じく30m、3が40mである。すなわちこれらの谷は屈曲点より下流側(東側)を30m〜40mほど北側にずらすことによって、元々のほぼ直線の谷に戻すことができる。こうしたリニアメント上での系統的な右屈曲は、これらの河川が形成されたと考えられる比較的最近(地質時代での最も新しい時代である第四紀)に己斐断層の横ずれ変位活動を受けてできたことを示している。