3−1−2 判読地域の地形概要

判読地域は、広島市の市街地西方約5kmの広島市西区高須地区から市街地北方約8kmの広島市安佐南区安古市(やすふるいち)町にかけての丘陵地帯である。本地域は鈴ヶ峰(標高312m)から己斐峠、畑峠を経て武田山(標高410m)に至るほぼ北東−南西方向に延びる山列と、広島市街地が発達する太田川の三角州の低地帯との間に位置し、平地に乏しく大部分が傾斜地からなっている。

本地域を含む広島県西部の地形的特性は、北東−南西方向の地質構造を反映したと考えられる、同方向に延びる山列や谷の存在が顕著なことである。広島市の北西部には、標高500〜700mの窓ヶ山(標高711m)山列、その南西に標高300m〜400mの武田山山列が北東−南西方向に延びている。窓ヶ山山列の北西には太田川の支流、吉山川が南西から北東に流れて谷地形を形成し、また窓ヶ山山列と武田山山列の間には太田川の支流、安(やす)川水系大塚川と八幡川水系石内川が流れ、谷地形を形成している。さらに武田山山列の南東側は、太田川本流によってその山体が限られている。

広島市の山地の大部分は白亜紀迸入とされる広島花崗岩類からなり、その山麓は緩斜面となっていることが多い。図3−1に示すとおり、判読地域は山麓斜面を主体とする丘陵地帯(山地のうち低地との比高差約300m以下で、原則として稜線が定高性を示すところ)であり、標高100〜300m、起伏量100〜200m、傾斜15度未満の頂部と、窓ヶ山山列に比べて緩傾斜の斜面及びこれを刻む谷からなっている。

本地域は、北東−南西に延びる武田山山列の南東側斜面末端付近に位置し、この山列に平行する方向に主要な谷が形成されている。主な水系は以下のとおりである。

・己斐八幡川水系:武田山山列のほぼ中央部に位置する畑峠付近の分水嶺より南南西方向にほぼ直線的に流下し、最下流部で南東に屈曲して太田川(放水路)へ合流する。本流へ合流する支流は、畑峠及び己斐峠付近を頂部とする南東向き斜面からと、茶臼山(標高340m)を頂部とする北西向き斜面から流れ込んでいる。両者のうち、南東向き斜面を流下する支流の方が直線的で、かつ標高の高い稜線に源を発するため流路長が長い。

・山本川水系:武田山山列のほぼ中央部の上記分水嶺より北北東に流れ、途中で大きく流路を逆向きに変えて最下流部ではほぼ南に流れて太田川と合流する小河川である。支流は主として武田山山列の南東向き斜面を流れてくるものが多い。

・安川水系:武田山山列の北端を東に流れ、山列を遮る大きな谷地形を形成している。判読地域ではこれに合流する支流として、武田山に源を発する北向きの支流が主として発達している。

図3−1 判読地域周辺の接峰面図  高橋(1991)(4)